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2025年5月3日土曜日

『ラストエンペラー』でたどる溥儀の激動の人生と歴史的背景

『ラストエンペラー』でたどる溥儀の激動の人生と歴史的背景

映画『ラストエンペラー』は、清朝最後の皇帝・溥儀の波乱の生涯を壮大なスケールで描いた歴史ドラマです。故宮での即位、退位、日本との関係、戦後の裁判と再出発…。中国の激動の時代背景とともに、彼の人生の軌跡を通して、歴史のうねりを追体験できます。この映画を通じて、20世紀中国の深層に触れてみませんか?



心に残る中国映画セレクション100がこれはいいという中国の映画を探しておすすめするサイトです。
今回は一度は見ておきたい中国映画「ラストエンペラー」をお贈りします。


映画『ラストエンペラー』とは?

映画「ラストエンペラー」より
 1987年に公開された映画『ラストエンペラー』は、清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)の激動の人生を描いた歴史大作です。監督はイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ、主演はジョン・ローンが務め、音楽には坂本龍一、デヴィッド・バーンらが参加するなど、国際色豊かな制作陣が話題を呼びました。
 本作は、溥儀が3歳で皇帝に即位し、やがて中華民国の成立により退位、その後、日本の傀儡国家・満州国の皇帝として擁立され、最終的に戦後の改革を経て一市民として生涯を終えるまでの波乱の軌跡をたどります。北京紫禁城(故宮)でのロケを実現した初の西側映画としても知られ、豪華な宮廷美術やリアルな歴史描写が高く評価されました。

 アカデミー賞では作品賞を含む9部門を受賞し、世界的に高い評価を得た本作は、単なる伝記映画を超え、20世紀中国の大きな変動を体感できる映像遺産ともいえる一本です。



なぜ今この映画なのか?


 『ラストエンペラー』は1987年の作品ながら、その問いかけは今なお色あせません。近代中国の激動を生きたラストエンペラー・溥儀の人生を通じて、帝政から辛亥革命を経て共和制、戦争と占領、民主主義革命という巨大な歴史のうねりが個人にどう影響を与えるのかが丁寧に描かれています。
 現代の私たちが、今この激動の社会の中にあって、国や時代が目まぐるしく変わろうとしている変化にどう向き合うか、個人として何を大切に生きるかという問いを静かに突きつけてくる作品でもあります。中国という国家を知る入り口として、また「歴史に翻弄された人間の物語」として、今だからこそ観る価値のある映画といえるでしょう。




作品情報・基本データ

  • 公開年:1987年
  • 監督:ベルナルド・ベルトルッチ
  • キャスト:ジョン・ローン、ジョアン・チェン、チェン・ペイペイ ほか
  • ジャンル:歴史ドラマ
  • 視聴可能プラットフォーム:Amazon Prime Video、Disney+ 等

監督・キャスト・受賞歴



撮影地と制作の背景|映画『ラストエンペラー』

 1987年に公開された映画『ラストエンペラー』は、史実に忠実かつ壮大なスケールで描かれた歴史ドラマとして高く評価されました。
 そのリアリティを支えた大きな要素が、実際の歴史的ロケ地での撮影と、国際共同制作による豊かな視点です。

故宮での歴史的ロケ撮影

本作の最大の特徴は、中国・北京の故宮(紫禁城)で初めて全面的に映画撮影が許可された作品であることです。
 清朝の宮廷生活を再現するにあたり、溥儀が実際に幼少期を過ごした場所で撮影されたことは、映画の臨場感と説得力を圧倒的に高めています。

ラストエンペラー 紫禁城
  故宮での撮影は、当時の中国政府と長期間の交渉を経てようやく実現されました。1,000人以上のエキストラ、数百着に及ぶ時代衣装、そして大規模な再現セットが、壮麗で荘厳な映像を支えています。

異国の地と複数の時代

溥儀の人生は北京だけでは語れません。作品中では、天津の租界、日本統治下の満洲(長春)、そして戦後の撫順戦犯管理所など、多くのロケーションが再現されています。実際の撮影では、中国国内だけでなく、イタリア・トリノの宮殿や庭園も使用され、彼の孤独や疎外感を象徴的に表現しています。

国際共同制作の意義

  本作は、イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督と、イギリス・中国の合作という形で制作されました。欧米の監督が中国の皇帝を描くという前例のない挑戦でしたが、それがむしろ、東洋と西洋の視点を交錯させた深い人間ドラマを生み出す契機となりました。
  脚本は中国の歴史と西洋の人間主義を織り交ぜる構成となっており、音楽には坂本龍一が参加。アジアとヨーロッパの文化的融合が、作品の芸術性と普遍性を一層引き立てています。

映像が語る「真実」への接近

  『ラストエンペラー』は、実際の歴史的舞台で撮影されただけでなく、演出や構図、光の使い方までもが「記憶と時間の流れ」を表現する手段となっています。撮影地の選定とその背景にある物語は、映像の背後にもう一つの「現実」を観客に届けてくれます。


物語のあらすじ(ネタバレなし)

 1950年、満州国戦犯として中国本土に護送された元満州皇帝溥儀は、護送中に手首を切って自殺を図る。薄れゆく意識の中、彼の半生の記憶がまざまざとよみがえる-。1908年、死期の迫った西太后によって皇帝に任命されたわずか3歳の溥儀は、1000人もの宦官にかしずかれて昔から続く皇帝の生活を送ることに。14歳になった彼は、イギリスから遣わされた家庭教師ジョンストンによって世界に目を向けるようになるが…。
(c)Recorded Picture Company


溥儀という人物を知る

『ラストエンペラー』:最後の皇帝・溥儀を跡付ける

溥儀と醇親王に抱かれる溥傑
(1909年)溥儀(右)と
醇親王に抱かれる
溥傑

 宣統帝愛新覚羅 溥儀は1906年2月7日、醇親王載灃の子として直隷省順天府(現:北京市)に生まれる。
 中華圏最後の皇帝であり、その生涯を題材にした映画から『ラストエンペラー』として知られる。幼帝として2歳で清朝第12代皇帝に即位し、元号から宣統帝と称される。

 

歴史上の溥儀とは

 溥儀(ふぎ)は、清朝第12代、最後の皇帝として、1906年に生まれ、1908年、わずか2歳で即位しました。これは、光緒帝の死後に西太后の強い意向により決まったもので、幼い溥儀は即位したものの、実際の政治権限はありませんでした。

 1912年、辛亥革命により清朝が崩壊し、溥儀は退位を余儀なくされますが、その後もしばらくは紫禁城に居住し、「上皇」として象徴的な地位にとどまっていました。
 


満州国皇帝・溥儀
『ラストエンペラー』
満州国皇帝・溥儀

 1924年に紫禁城を追われると、天津の日本租界での生活を経て、満洲国建国(1932年)に際して日本の傀儡皇帝として再び即位します。これは「執政」→「皇帝」という形で形式的に行われたもので、実質的な権力は日本側にありました。

 終戦後はソ連に抑留され、1950年に中国へ引き渡されたのち、撫順戦犯管理所で10年間の「再教育」を受け、1959年に特赦を受けて出所。晩年は普通の市民として北京で暮らし、1967年に亡くなりました。

   彼の人生は、中国近代史そのものの激動を体現しており、皇帝から戦犯、市民へと身分が劇的に変わった希有な人物として知られています。

溥儀の弟・溥傑とその妻・嵯峨浩
溥傑とその妻・嵯峨浩

 ここで、溥傑が苦難の中にあっても彼を支え続けた1歳2か月下の弟溥傑の名前を挙げなければならないと思います。溥儀と溥傑の絆は溥儀が満州国皇帝になって、溥傑が兄の溥儀の執政を支えるようになってから特に深まったと考えられます。
 しかしこの二人の人生は、そのころから急速に暗転し、戦争に巻き込まれていくことになります。特に日本が太平洋戦争に敗れてからは溥儀は皇帝の座を追われ、溥傑も兄の溥儀と共に、戦争犯罪者として収容所生活を送ることになります。
 このように目まぐるしく状況の変化する中で、ともすれば人間性を失いかねない環境の中でも、溥儀がそれなりの矜持を保ち、人間の尊厳を失うことなく居られたのは、溥傑が兄の溥儀の近くにいて支え続けたからと云えましょう。

 最後に溥儀が活動した舞台を特設ページで少し紹介できるようにしましたので、ご覧になってください。
 詳しい説明は 【特設ページ】 ☜ こちらをクリックしてください


映画との違いと考察

 映画『ラストエンペラー』は、溥儀の人生を全体的に丁寧に描いていますが、**あくまで映画的演出を加えた「人物像の再構成」**であることにも注意が必要です。

 たとえば、紫禁城での少年期の孤独感や無力感は非常に強調されていますが、史実では、溥儀は学問や西洋文化にも興味を持ち、イギリス人教師ジョンストンとの交流を通じて一定の知識と視野を育んでいました。また、満洲国時代の描写についても、映画では溥儀がほぼ無力な傀儡として描かれていますが、実際には内部である程度の抵抗や主張を試みた記録もあり、完全な「操り人形」だったとは言い切れません。

 一方で、映画が映像美や象徴的な演出を通じて描こうとしたのは、**「帝王として生まれながら、時代の波に翻弄された一人の人間の悲哀」**であり、事実の再現だけでなく、観る者に人間としての溥儀の苦悩を感じさせることに重きを置いています。
 
 このように、映画と史実の間には差異がありますが、それは単なる事実誤認ではなく、むしろ溥儀という人物の「心象風景」を伝えるための映像的選択だったとも言えるでしょう。



感想と考察:現代に響くテーマ

 
 『ラストエンペラー』が語るのは、ただ一人の皇帝の人生ではなく、「時代の流れに翻弄される個人」の物語です。誕生とともに運命づけられ、望まぬままに帝位に就き、その後の激動の歴史の中で「象徴」から「傀儡」へ、そして「市民」へと姿を変えていく溥儀の人生には、私たちにも通じる問いが含まれています。
 自分の人生を、自分の意志で生きるとはどういうことか。
 時代や社会に流される中で、個人はどうすれば尊厳を保てるのか。
 彼の人生には正解も勝者もありません。ただ、変化を受け入れ、矛盾に満ちた環境の中で懸命に生きた一人の人間の姿があるだけです。だからこそ、どこか心に残り、ふとしたときに思い返す映画なのかもしれません。




こんな人におすすめ


  • 歴史映画が好きで、実在の人物を題材にした作品に興味がある人
  • 中国の近代史や清朝、満洲国に関心がある人一人の人物の内面と時代の交差点に魅力を感じる人
  • 派手なアクションよりも、静かで重厚なドラマを好む人
     映像美や美術・衣装に惹かれる人『ラストエンペラー』は、映画を通して歴史や人間の複雑さをじっくり味わいたい方にぴったりの作品です。
  • 歴史映画が好きで、実在の人物を題材にした作品に興味がある人


関連作品と次に観たい映画


この映画を観たあとにぜひ続けて観ていただきたいのは、以下のような作品です。 
  • 『始皇帝暗殺』(1999)
    → 秦の始皇帝と暗殺者・荊軻の緊張感あふれる駆け引きを描いた歴史大作。王と刺客、それぞれの立場の重みを問う。
  • 『英雄(HERO)』(2002)
    → 権力と犠牲、平和の代償を問いかけるアート性の高い歴史アクション。ラストエンペラーと同じく、映像の美しさも見逃がせない。






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2022年10月10日月曜日

墨攻:今を去る2500年前、専守防衛論を掲げ実戦を戦った軍師がいた

墨攻:今を去る2500年前、専守防衛論を掲げ実戦を戦った軍師がいた

墨攻:今を去る約2500年前、中国では春秋戦国時代に入り、各地の封建諸侯が入り乱れての覇権争いを繰り返していた。その群雄割拠の時代に非戦を唱え、専守防衛論を真正面に掲げ実戦で戦った墨家の実践的指導者を画いたものです。その戦いぶりは後の千早城の戦いにも受け継がれたと思わせる先駆的なものでした。
 時は今を去る約2500年前、中国では春秋戦国時代に入り、各地の封建諸侯が入り乱れての覇権争いを繰り返していた。

 やがてその中でも秦の始皇帝が全国を統一することになる。その理論的主柱は、法家という強権的な法治主義を唱えていた理論集団であったが、墨家とはその法家と対極をなす理想主義を掲げる理論集団であった。

 このことを頭に入れて、映画を鑑賞するといっそう面白くなる。

こんにちは! 中国の春秋戦国時代の墨家集団の活躍を著した中国映画「墨攻」の評論と歴史的背景をお届けします。群雄割拠の時代に非戦を唱え、専守防衛論を真正面に掲げ実戦で戦った墨家の実践的指導者を画いたものです。

映画の紹介
 戦乱の中国を舞台に、非攻(侵略戦争否定)を説いた”墨家”という理論集団の天才戦術家革離の活躍を、中国・日本・香港・韓国の合作で映画化した歴史アクション超大作。今香港で闘われている自由を自立を求める運動にも通じるものがあります。雨傘、マスクなど実に多彩な戦術を繰り出してきます。


映画データ
製作年:2006年
製作国:中国/日本/香港/韓国
原題:A BATTLE OF WITS

製作:ホアン・チェンシン 、 ワン・チョンレイ 、 ツイ・シウミン 、 リー・ジョーイック 、 井関惺
製作総指揮:ワン・チョンジュン 、 スティーヴン・ン 、 ホン・ボンチュル

出演:アンディ・ラウ 、 アン・ソンギ 、 ワン・チーウェン 、 ファン・ビンビン 、 ウー・チーロン 、 チェ・シウォン 、 ワン・チーウェン

監督:ジェイコブ・チャン


ストーリー
 紀元前370年頃の戦国時代、攻撃をせずに守り抜くことに徹した“非攻”を信念とする集団“墨家”がいた。

 その頃、大国・趙が送り込んだ10万の大軍を前に、全住民わずか4千人の梁城は落城寸前の危機に瀕していた。
 梁王は墨家に援軍を求めるが、やって来たのは粗末な身なりの革離ただ1人だった…。



背景と見どころ
 墨家は墨子に創設された理論軍事集団で当初は儒家と激しく対立し、相応の影響力を有したが、かなり限定された規模の組織を統制する方法を天下に敷衍しようとするもので、現実的に有効なものになり得なかった。その教えは兼愛・非攻という特殊な理論体系であった。しかし、陰謀や権謀術数の渦巻く春秋戦国時代にあって、このような理論戦闘集団が一時的にも、部分的にせよ現実に存在し、活躍することがあったということは見所といえよう。「墨守」という言葉が残るように、墨家は現実ではこの映画に見るように、防御戦に関する豊富な経験や知識をもっており、その戦いぶりもめざましいものであった。これらの闘い方は、後の日本の楠正成や真田幸村などにも踏襲されたのではないかと思われる。

後書き
 ネットで見かけた映画評論に、主人公の革離と将軍の娘扮するファンビンビンのラブシーンがストーリーの邪魔になっているという批評がなされていたが、私の見る限り、二人のラブシーンなどどこにも見当たらない。逆にもっと色香を魅せるほうがよかったのではと思っているくらいだ。
 このような評論は、映画の本質を貶めるもので、少し残念だ。あの殺伐とした戦場で、まだ美しさを放っているファンビンビンが扮するゲリラは美しい。


春秋戦国時代に関する、
詳しい説明は 【春秋戦国時代】 ☜ こちらをクリックしてください
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2018年11月30日金曜日

ラストサムライのトム・クルーズかラストソルジャーのジャッキー・チェンか対比が面白い



ラストソルジャー

ラストソルジャー:壮大なスケールで描く「手柄」を立てようという純粋に「功利主義」という匂いがプンプンするヒューマン歴史戦争映画

中国歴史映画「ラストソルジャー」というより、娯楽映画

ラストソルジャー 壮大なスケールで描く「手柄」を立てようという純粋に「功利主義」という匂いがプンプンするヒューマン歴史戦争映画

娯楽ではトムクルーズ・渡辺謙の「ラストサムライ」を越えた中国歴史映画。

 なぜこうも描き方が違うのか。 違って当たり前。だから面白いのだ。
  「ラストサムライ」のトム・クルーズの方はそこにそこには「功利」という匂いも感じさせない。まるで西部劇の世界。
 渡辺謙は滅びゆく武士の死生観を代表し、まるで男の美学としての「死に方」を描く。

 片やジャッキー・チェンは「手柄」を立てようという純粋に「功利主義」という匂いがプンプンしている。
  歴史に翻弄された人間よりも、歴史に翻弄された大衆に焦点を当て、平和の大切さを教えてくれる映画。
また大義名分よりも結局は大衆は「功利」で動き、歴史は経済に決定されるということを教えてくれる映画。


ジャッキーチェンの新しい境地にさらなる期待!

ジャッキーチェンといえば、香港の超大物スター、カンフー、アクション映画といった言葉がすぐ思い当たりますね。
ハリウッドスタートして活躍してきたジャッキーが香港に帰ってきた時は、既におじさん。
彼も生き残りをかけ必死に自分の方向を探していたのでしょう。
最近といってももう20年近くなりますが、ようやく探し当てたようです。
BestKid、1911、三城記の作品を見て、従来のジャッキーにないものを見てしまったように思いますが、あなたは?
これを中国本土映画への融合という評論家もいますが、私は彼の持つ思いを表に打ち出してきた結果と思います。
私は、彼が新しい映画のジャンルを作り出していくことを期待しています。

映画データ
製作年: 2010年  製作国:中国/香港
 原題: 大兵小将/LITTLE BIG SOLDIER

「ラスト・ソルジャー」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ
監督: ディン・シェン
製作: ソロン・ソ 、 ユエン・ノン
製作総指揮: ジャッキー・チェン
出演: ジャッキー・チェン 、 ワン・リーホン 、 ユ・スンジュン 、 リン・ポン 、 ユー・ロングァン 、 ユ・スンジュン 、 ケン・ロー 、 ドゥ・ユーミン


ストーリー
 戦国時代の中国を舞台に、ある時、大国・衛(えい)の軍が弱小国の梁(りょう)に攻め入る。偶然にも、深手を負った衛の将軍を捕虜にし、自国の梁に連れ帰る老兵が、待ち受ける数々の困難の中で次第に将軍と奇妙な絆を築いていくさまをコミカルなタッチを織り交ぜ綴る。そして、最後のどんでん返しは?
 フィクションはフィクションとしても、楽しめる映画。


あとがき
 中国の戦国時代(紀元前400年頃)に戦いに狩り出されたジャッキーチェイン扮する雑兵の戦場での活躍が可笑しい。戦場でのた打ち回る全編を通して、戦いのバカバカしさを強く訴える。
 いまや中国の中国人民政治協商会議の委員も勤めるジャッキーは、中国の顔であるばかりでなく、世界の映画人として立派にその勤めを果たしている。今後更なる大きな役割を果たしていくことを期待している。

 この映画も紋切り型の「反戦映画」とせず、エンターテインメント映画として、観客を十分楽しませながら、彼の良心を前面に打ち出した映画にしている。トムクルーズ・渡辺謙の「ラストサムライ」と題名は似ているが、その視点はまったく異なるものだ。わたしはこの映画に軍配を上げたい。


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2018年9月22日土曜日

運命の子:史記の物語を映画化。范冰冰が貴婦人として泥沼に咲く

運命の子

中国百科映画館が皆様に中国映画中国映画「運命の子」をお贈りします。
今回はチェン・カイコー監督が「史記」にある春秋戦国時代の「趙氏孤児」を映画化。
 ファン・ビンビンが戦国の血なまぐさい、ドロドロした世界に咲く貴婦人を美しく健気に演じる

映画の紹介
陳 凱歌(チェン・カイコー)監督作品! 『史記』に描かれた「趙氏の孤児」が、2600年の時を乗り越え現代に訴えかける中国時代劇!


映画データ
出演: グォ・ヨウ, ワン・シュエチー, ファン・ビンビン, ホァン・シャオミン, チャン・フォンイー
監督: 陳 凱歌(チェン・カイコー)
言語: 中国語
販売元: 角川書店
発売日 2012/06/08
時間: 128 分


ストーリー
 中国紀元前3世紀、群雄割拠し、世の中は乱れていた。

 有力諸侯趙氏の子供と間違われて、趙氏の主治医の子供と、妻は殺されてしまう。

 主治医は趙氏の子を引き取って大切に育て、その子を使って、自分のこと妻を殺した武将に復習をしようと計画する。

 何も知らない武将は、その子の父親として、その子を溺愛し、時が過ぎその子は逞しく成長した。子供は自分の身の上を知り、愛する父親が実は自分の父と母を殺した敵だと知る。



背景と見どころ
 古代中国、夏・商(殷)王朝が滅び、紀元前11世紀に周の武王が王朝を建てた。その周王朝も紀元前770年に都を移し東周と称せられ、戦国時代に移行する。

 この物語は戦国時代の晋の国、趙氏の滅亡に係る話。時期的には紀元前230年ごろに設定されている。
 春秋戦国時代の歴史的意義は、大きな変革を経験した時代である。

 この時代に達成された製鉄技術の進歩は、武器の長足の進歩と共に、農業技術や農器具にも目覚しい発展を促し、農業生産も大きく発展をした。これはこの時代では産業革命と呼ぶべきものかもしれない。

  周の封建制のお陰で、農民は土地に定着し、農業技術が進歩すると、人々の暮らしが豊かになり、国力も増大する。君主は、より多くの農地と農民を求めて、戦いを繰り返す。

 しかしこれが戦国時代になり、いくつかの強大国にまとめられてくると、まとまった強大な国の中で、血みどろの簒奪戦が繰り返されるようになる。こうして、周辺民族も含め、坩堝の中に入れられた諸民族は、ぐじゃぐじゃに混ぜられた上、やがて大きな統一国家へと発展していく。



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2018年7月11日水曜日

秋瑾 ~競雄女侠~:近代中国の陰で散った女性革命家の生涯が蘇る!

秋瑾 ~競雄女侠~

あなたはシュウキン(秋瑾)をご存知ですか?ご存知の方はかなりの中国通!!
彼女は辛亥革命より前に、革命運動に身を投じ、若干31歳の若さで、公開処刑に付される。まだ封建遺制が巾を利かす清朝末期に実在した激越な女性革命家が今蘇る!!
近代中国の夜明けに一瞬輝いて消えた女性革命家シュウキン。


映画の紹介
実在の革命家・秋瑾(しゅうきん)の壮絶な人生を忠実に描いた歴史アクション。幼い頃から血気盛んで乗馬や撃剣などを好んで育った秋瑾は、夫と幼子ふたりを残し、当時女子教育が進んでいた日本への留学を決意する。

映画データ
出演: クリスタル・ホアン, デニス・トー, ローズ・チェン, ション・シンシン, アンソニー・ウォン
監督: ハーマン・ヤオ
字幕: 日本語
販売元: アメイジングD.C.
発売日 2012/09/21

ストーリー
19世紀後半、清朝期。女性は纏足を強要され、まともな教育も受けられず、人間としての自由を奪われ生きなければならなかった封建的な時代。
 比較的裕福で自由な気風の家庭の下に育ったシュウキン秋瑾は伸び伸びと育つ。結婚してからも世間の風潮に我慢ならなかった彼女は、夫と幼子二人を残し、当時女子教育が進んでいるとされた日本へ留学を決意する。
 留学してからは、それまでの鬱々とした生活から開放され、女性解放、民主化運動に傾倒していくが、やがて日本政府にも疎まれ、国外追放になり中国に戻ってくる。
 しかし自由の翼を得た彼女をもう誰も留めることは出来なかった。


あとがき
 これまでのシュウキン(秋瑾)の評価は、どちらかというとジャンヌダルクと比較されるような、女剣士と派手な立ち回りに目を奪われ、大衆受けするような講談の主人公のような評価が、強かったように思う。 これはある意味、シュウキン(秋瑾)にとって一種の風評被害のようなものではないだろうか。
 しかし一部には、彼女を全面的に見直そうという機運もあるような気がする。鈴木頌氏の論文もその一翼をなすものと評価できる。氏かこの論文の最後で言っているように、


 秋瑾は女盗賊のような野蛮な人間ではない。その戦闘性は高い知性と貶められた女性への深い共感に裏付けられている。
但し私は全面的に鈴木氏の意見に同調するものではない。秋瑾の持つ左翼小児病的弱点はなんとしても頭の中から消えないことだけは付け加えておこう。



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2018年6月1日金曜日

中国映画「一輪明月 ~弘一大師の生涯」:漫画を世に送出した豊子ガイとの麗しい師弟関係

一輪明月 ~弘一大師の生涯

中国映画のDVD「一輪明月 ~弘一大師の生涯」を観ました。

 この映画は、清朝末期から日中戦争末までを生きた禅宗の高僧で、芸術家でもあった、弘一大師の波乱に満ちた生涯を描いたものです。 日本ではあまり有名ではありませんが、中国では中国の近代芸術を開いた禅宗の高僧として広く知られて、深い尊敬をを受けています。彼の薫陶を受け、中国で「漫画」というジャンルを確立した豊子愷が羽ばたいています。
 中国映画「弘一大師の生涯」は2005年に製作されています。主人公の日本人妻として、ビビアン・スーが起用されています。


映画のキャッチコピー
 孤高の天才芸術家・弘一大師の生涯を描く人間ドラマ。天津の裕福な家庭で妾妻の子として育った李叔同は、25歳で日本に留学し芸術を学び、その後の中国芸術界に新風を吹き込む。日本人女性との結婚、仏教への傾倒、出家、妻との別離までを綴った感動作。


映画データ
製作年: 2005年
製作国: 中国
原題: A BRIGHT MOON

監督: ルー・チー 、 路奇
出演: プー・ツンシン 、 ビビアン・スー(徐 若瑄) 、 リー・ジエンチュン 、 マー・シューリアン 、 グー・ハイビン 、 マー・シューリャン
ストーリー
 この映画は弘一大師の生涯を忠実に描いた伝記である。
 しかし、いくら伝記ものといえ、時代背景のぶつ切りの節目節目をつなぎ合わせただけの、ある意味粗雑なつくりになっているのは残念。
 また、その間の主人公の心の葛藤と時代背景との関連が描かれていなく、主人公の行動が分かりにくいものになっている。く

背景と見どころ
 物語は、清朝末期太平天国の乱等で、社会は大きく乱れる時代を描く。清朝は、李鴻章の地方軍閥「淮軍」、曽国藩の「湘軍」等の力を利用し、押さえ込もうとするが、命脈の尽きた清朝を立て直すことは出来ず、社会は乱れに乱れることとなった。
 この映画は、1880年主人公が生まれた年から、1911年の辛亥革命、袁世凱の台頭、国民政府の成立、日本の侵略、日中戦争、太平洋戦争までの主人公の生きた動乱の時代を背景に主人公の生涯を描き出す。
 また、弘一大師の弟子である、豊子愷は日本の竹久夢路にも師事した画家であり、「漫画」という題つきの線画という新しいジャンルの確立に貢献をしている。この映画でも、弘一大師と豊子愷の師弟関係が描かれており興味深い。
 また、もう一つ残念な点は、この映画が全体的に荒削りで、緻密さにかける点である。昔の創世記の映画ではあるまいし、もう少し丁寧な描き方をして欲しかった。

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2018年4月4日水曜日

中国映画「項羽と劉邦 鴻門の会」:中国の天下を争った三人の武将の死に様を描く

項羽と劉邦

中国映画のDVD「項羽と劉邦 鴻門の会」を観ました。すばらしい映画です。
 「中国映画おすすめ100選への道」がこれはいいという中国の映画を探して、その時代の歴史的背景に注目して、映画の案内をお送りしています。
中国映画「項羽と劉邦 鴻門(こうもん)の会」:京劇でも有名な「覇王別記」のもう一つの舞台


映画の紹介
 中国の歴史の一大転換期と言われる春秋戦国時代にその名を轟かせた武将・項羽、劉邦、韓信らが、激闘を経てやがて覇王となっていく半生と生き様を描く。
 映画としては。「生き様」というより、両雄の「死に様」を対比させた映画である。私にとっては、項羽と虞妃の関係、劉邦と呂皇后との関係の対比が面白い。



映画データ
出演: ダニエル・ウー, リウ・イエ, チャン・チェン, チン・ラン
監督: ルー・チューアン
言語: 中国語 字幕: 日本語
販売元: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
発売日 2014/11/12
時間: 116 分


  ストーリー
 ストーリーの主眼は、中国ではじめて統一国家を成し遂げた秦朝が倒れた後の後処理におかれる。

 項羽は劉邦が自分より先に(秦の本拠地の関中 (陝西省) に入った者が王となる約束していた)関中に入ったとして劉邦を抹殺しようとした。その衝突を心配した劉邦の将軍の張良や項羽の叔父の項伯らが和睦をはかり,咸陽の入口の鴻門で両者を会合させた (BC 206) 。

  この会合で劉邦は項羽に忠誠を誓った。項羽は劉邦を殺そうとするも、何とか逃れる。劉邦は陣を立て直し項羽を攻め、項羽は虞妃とともに自害し果てる。(この場面は京劇での演目「覇王別記」のクライマックスとして描かれている。
 天下を統一した劉邦は政敵の抹殺を図り、韓信もその計略に落ち、殺される。 



  背景と見どころ
 華々しい覇権の争いの場面とは異なり、この映画では、項羽の自害の場面、劉邦の死の床での死に様を描いた、実に暗い場面が続く。しかし、この二人は同じような戦いを経てのし上がったといえ、二人の死に様は大きく異なる。

 項羽が敵に囲まれ打ち果てたといえ、愛妃をそばに最後まで置き、死を嘆じて其れなりに毅然として死んだのに比べ、劉邦は天下を取ったといえ、老醜をさらして死んだ様は、あまり美しいものではない。
 覇王として残忍で暴虐ではあったが、虞妃を最後まで愛しつくした男気のある項羽は京劇「覇王別記」の主役として後世語り継がれた。

 無頼の徒から身を起こし、不倶戴天の敵項羽を打ち破り、中国に漢王朝という強大な国家を作り上げた、人の心をつかむのに長けた武将・劉邦の対比は興味深い。

 この映画は、劉邦は既に死の床にあるものの、韓信抹殺に主導的役割を果たす呂皇后の陰湿な計略を描き出す。劉邦亡き後、呂皇后は、劉邦の側室を酷い方法で殺すことになるが、そのあまりに惨い殺し方に、息子は厭世的になり、その後政治に遠ざかる様になったいわれています。

 さらに彼女自身は後代の唐代の武則天、清代の西太后とともに、三大悪女として汚名を天下に知られることになりました。呂皇后の殺戮の発端はこの韓信の抹殺に始まるといえましょう。

漢王朝の歴史的役割
 漢王朝は劉邦が天下を統一して以降200年ほどで倒れ、「新」という国が立つが、それまでの間を前漢(紀元前206年 - 8年)という。

 新が倒れ劉氏の一族が漢を再建し、三国時代の魏に禅譲するまでの間200年ほどを後漢(25年 - 220年)という。

 この二つの王朝(両漢)を総称して「漢王朝」と呼ばれる。また、この名前は中国全土や中国の主要民族を指す名称ともなった。

 漢王朝の歴史的役割とは、この400年で、中国の国家としての基盤が確立したといっていい。この意義は非常に大きいといわねばならないだろう。


関連記事:中国映画「さらばわが愛 覇王別姫」に見る京劇の苦難は中国の歴史的苦難の時代

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2017年9月8日金曜日

中国映画「宋慶齢の生涯」:中国の命運を決定付けた荘家の三姉妹!

中国映画「宋慶齢の生涯」:中国の命運を決定付けた荘家の三姉妹!

映画の紹介
宋慶齢の生涯:心に残る中国映画セレクション100
宋慶齢


 今世紀初頭の中国で、長きにわたって中国を支配してきた清朝は断末魔のうめきを立てながら、苦しんでいた。時代の奔流は、仲の良い三姉妹を、国をも引きちぎってゆく・・・・・。辛亥革命、西安事件、日中戦争、国共内戦・・・彼女たちは愛し、傷つき、苛酷なまでの運命に翻弄されながらも、激動期を生き抜く。この時代は生きていることだけでも、すごい時代であった。


映画データ
  • ジャンル:ドラマ, アジアの映画 
  •  監督:メイベル・チャン 
  •  主演:マギー・チャン, ミシェール・ヨー, ヴィヴィアン・ウー, ウィンストン・チャオ 
  •  助演俳優:ウー・シングォ, チャン・ウェン, エイレン・チン, ニウ・チェンホワ
ストーリー
20世紀前半、中国の清王朝から中華民国へと移り行く時代の流れの中で、古い因習にとらわれずに育てられた宋家の三姉妹。アメリカ留学から帰国した彼女たちは、それぞれに全く異なる道を歩むこととなる。長女(ミシェル・ヨー)は財閥の御曹司、次女(マギー・チャン)は後の国家主席・孫文、そして三女(ヴィヴィアン・ウー)は国民党の指導者・蒋介石のもとへそれぞれ嫁いでいく。そして孫文の死後、夫の革命の遺志を継ぐ次女は長女・三女と対立するようになり、姉妹のきずなに溝が生じていく……。それでも孫文の存命中は、未だ絆は壊されずに残っていた。
 しかし、孫文が死ぬや否や、待っていたかのように蒋介石が反旗を翻す。このことからも、孫文がこの時代の最大のキーマンであった。孫文の死後孫文の遺志を守ろうとする宋慶齢は蒋介石とともに歩もうとする長女、三女と対立は深まっていく。そして、日本帝国主義を中国から放逐した後、国共内戦の中で、宋慶齢と姉妹達の対立は決定的なものになる。



背景と見どころ
映画としてより、歴史参考書的な読み物としてみれば面白い。この映画のなかの三姉妹の間の対立は、中国の当時の路線の対立をそのまま反映したものであり、三人の国家・大衆に対する態度でその路線の違いが浮き彫りになっている。



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2017年8月4日金曜日

中国映画「1911」:ジャッキーチェンが孫文の腹心の友を演じきる

1911

「1911」とは1911年に起こった中国の辛亥革命を描いた映画の題名です。
近代中国の誕生を知るためには必見の中国映画。辛亥革命なくして、中国の現在はない。この革命によって、政治、経済、文化、ありとあらゆるものが、それまでの皇帝支配から完全に覆された。そればかりか、その余波はロシアにも及び西洋列強は革命の波及を恐れ、干渉を開始する。



映画データ
出演:ジャッキー・チェン 、 リー・ビンビン 、 ウィンストン・チャオ 、 ジョアン・チェン 、 ジェイシー・チェン(房祖名) 、 フー・ゴー 、 ニン・チン 、 ジャン・ウー 、 ユィ・シャオチュン 、 ジェイシー・チェン 、 ジャン・ウー
監督:チャン・リー


ストーリー
20世紀初頭、清王朝は一路滅亡の道をたどっていた。国はアヘン戦争で敗れ、列強の餌食と化し、国民は清朝、中国国内の豪族・軍閥の支配と西欧列強の3重の支配に苦しんでいた。太平天国の乱やその他反乱が勃発し、乱れに乱れていた。国を憂う若者たちは王朝の打倒を掲げ、各地に革命組織を結成していく。
 孫文も革命を志すが武装蜂起に失敗し、日本に亡命する。そこで黄興と出会い、同志となる。孫文は黄興と何度かの武装蜂起の後ついに清朝を倒し、辛亥革命を成就させる。


 しかし、迫り来る欧米の侵略を食い止めるため、新しく建てた政権を不動のものにせねばならない。そのため孫文は周りの反対を押し切り、軍閥の頭目である袁世凱と妥協し、袁世凱を総統に推挙する。果たして辛亥革命はどこへ行く。


背景と見どころ
 辛亥革命の陰の立役者として二人の日本人の名を上げなければならない。宮崎滔天や長崎の梅屋庄吉などである。宮崎滔天の名前は映画にも出てくるが、梅屋庄吉の名前は出てこない。彼は、現在の日本円にして1兆円にも上る援助をしたともいわれ、彼の援助なくして辛亥革命の成功はあり得なかっただろうとも言われている。

 スタンフォード大学のある教授で、「政変なり、革命の性格を見るには、金の流れを見なさい」と、金や資金が全てあるかのようなことを言うものもいるが、それは一つの側面であり、それが革命の性格を決定するものではない。資金がどこから出ていようと、その革命の担い手はどこにあるのか。その革命が達成したものは何か。といったことにかかっていることを忘れてはならない。

 この映画のみどころは、この映画がドキュメントタッチで史実を忠実に再現しようとしていることだ。それから孫文が何を考え何を思って行動したかを知ることが出来ることである。
 この映画の主役はジャッキーチェンが演じる黄興であるように宣伝されているが、商業ベースではやむをえない部分であるが、この映画の主役は「孫文」である。それは誰が演じるかなんていう問題ではない。ちょうど映画の中で孫文が「総統に誰がなるかの問題ではない」と語っているのと全く同じことが言える。逆に私はジャッキーチェンは脇役を見事に演じきったことが、この映画ももう一つの見所だと思う。そこを見失うとこの映画の真価が見えなくなってしまう。 



辛亥革命についての詳しい説明は 【中国百科ノート 歴史編「辛亥革命】 ☜ こちらをクリックしてください
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2017年7月22日土曜日

日中戦争前夜の混乱期を生き抜く夫婦。ジャッキーチェンの両親がモデルの中国映画「三城記」

三城記

ジャッキーチェンの両親が国民党軍、日本軍、共産党ゲリラの三つ巴の戦いの混乱の続く地獄のような中国社会をいかに生き抜いたかを描いた中国映画「三城記」をお贈りします。
「三城記」の三城は安徽省、上海、香港と両親が戦乱を逃れて渡り歩いた都市を指します。


映画の紹介
 この映画を見ると平和の大切さを実感します。私はこの映画は反戦映画だと思います。
メガホンを執ったのは、「宋家の三姉妹」などで知られるメイベル・チャン監督。虐げられるものへのやさしい視線を感じる。


映画データ
出演者:ラウ・チンワン、タン・ウエイ
監督:メイベル・チャン(張婉婷)
収録時間:131分
原題:三城記

メイベル・チャンは、香港の映画監督。
生年月日: 1950年11月17日 

生まれ: 中華人民共和国 広東省
パートナー: アレックス・ロー (1986年から)
学歴: ニューヨーク大学 (1981年 - 1982年)、 香港大学
受賞歴: Hong Kong Film Award for Best Director、 Golden Rooster Award for Best Co-Produced Feature

作品
非法移民(1985年); 誰かがあなたを愛してる(1987年); 八両金(1989年); 宋家の三姉妹(1997年); 玻璃の城(1998年); 北京ロック(2000年); 失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン(2003年)
ストーリー
 ジャッキーチェンの父親は山東省に生まれ、安徽省、上海、香港へと流れていく。それも決して自分の意志ではなく、戦火から流れたり、家族を護るため。ダオロンが母親のユエロンをアヘンの取引で尋問した時、このご時勢多少のことは責められないといって釈放してしまう。
 それをきっかけとして二人は次第に係るようになり、やがて二人力合わせて、ひたすら「生」を求めて生き抜く。生易しいストーリーではなく、凄まじい展開だ。
 この二人に係ってくる廃品回収の青年が出てくるが、彼の姿がこの映画の中ではもう一つの「赤い糸」として鮮やかにストーりーを際立たせている。


背景と見どころ
 この映画のテーマは戦争の中で、苦しみながらも、逞しく行きぬく庶民の群像。日中戦争は間違いなく日本が仕掛けた全面戦争だ。
 映画の中では、国民政府がいろいろ狼藉を働く場面が出てくるが、この時代の上海は、日本、国民政府、共産党の抗日部隊が三つ巴の戦いを繰り広げていた。
 そのような背景があったからこそ、廃品回収の青年がダオロンの命を助けるために共産党のゲリラ部隊に援助を申し出て、大量の時計を譲り受け、金に換えるという話が生きてくる。そしてその青年は、恩返しとして、爆薬をトラックに積み込んで国民党軍の中に突っ込んでいく。
 考えさせられるシーンだ。




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2017年6月29日木曜日

コンリーの美しさがひときわ引き立つ中国映画 「王家紋章」

王家の紋章

映画の紹介
 晩唐に起こった黄巣の乱で、中国は五代十国の乱世に突入する。その中の一つである後唐を舞台に繰り広げられた陰謀渦巻く権力闘争は、重陽節を軸に華やかな宮廷を血で染める。国王、王妃、皇太子、第二王子、第三王子の間の争いは行き着くところを知らない。コンリーの王妃はあくまで美しく、悲しくもある。

映画データ
主演 :チョウ・ユンファ, コン・リー, ジェイ・チョウ, リウ・イェ
助演俳優 :シン・ジュンジェ
監督 :チャン・イーモウ


 ストーリー 



背景と見どころ
この物語は、唐の末期に起こった黄巣の乱の平定に力のあった朱全忠が後梁を建てるが、この映画の中の王である李存勗は923年後梁を滅ぼす後唐を建てた。この後唐が舞台となっている。後唐の権力基盤はまだ脆弱で定まらず、権力闘争で揺れ動く。唐は終わり、乱世の五代十国の時代に突入する。この後唐は936年に滅んでいる。後唐の寿命は僅か13年の短いものであった。それでも後唐の勢力図は地図の通り、華北を制する広大なものであった。


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2017年6月19日月曜日

モンゴル人が描くジンギス汗のモンゴル統一の戦いを描く「モンゴル」

モンゴル

映画の紹介
  中国百科映画館がおすすめする中国映画ではない「モンゴル」・・日本人のたち位置が分かる!


本年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。 史上最強の統率者チンギス・ハーンの、知られざる半生を描いたスペクタクル超大作。

 この映画の時代は、日本で言えばちょうど鎌倉幕府が誕生した時代に相当する。
 この映画の舞台となったモンゴル平原とゴビ砂漠と日本の自然との違い。義経がジンギスハンになったという伝説もあるが、この映画を見ればそれが如何にあり得ないことかわかるのではないか。
 美しい自然に恵まれた日本人はどうしてあの荒ぶる大自然と荒ぶる民の中に生きることが出来ようか。
 この映画は、日本人の立ち位置は如何にあるべきかを知らしめるよき教材になった。






映画データ
浅野忠信/スン・ホンレイ/クーラン・チュラン
監督・脚本・製作:セルゲイ・ボドロフ

ストーリー
  未だこの世が暴力と暴虐に支配されていた時代、モンゴルでは多くの部族がその覇を求めてせめぎあっていた。その一部族の頭領の息子として生まれたテムジンを待ち受けていたのは、父親の毒殺、背信、そして異国で奴隷として獄につながれるという過酷な試練。
 しかし、彼の不屈の闘志はその試練を撥ね退け、さらわれた妻とその子を救い出し、他部族の子にも拘らず、自分の子として育てる。彼はやがて、寛容と包容力で次第に部族を統合し統率者として任じていく。
 この世に二人の覇者は要らない。義兄弟にして宿敵の勇士ジャムと覇を決する戦いで相見えることとなる。
 ジャムとの戦いでハーンとなった男はジンギスハーンとして、更なる世界制覇の道に押し出されてくる。



背景と見どころ
 この映画の中で度々繰り返される会話。「モンゴル人は○○じゃないの?」「俺は違う!」この常識にとらわれない、強烈な個性が、かれをモンゴル大帝国のハーンへと導いたのではないか。勿論今ではこの価値観、世界観は通用するものではない。では今ではどういう世界観が要求されるのだろうか。
 それは、「世界全体を見渡した上で、色々の価値観を相互に認め合い、相手を納得させる寛容と説得力」ということになるだろうか? 余りにきれいごとかもしれないが、しかし今では互いに我を張り合っていたのでは、世界は滅亡してしまうような気がする。
 人間は既に地球を余裕のない状態にまで持っていってしまっている。人間よ賢くなれ!


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2017年6月7日水曜日

「ムーラン」:心に残る中国映画セレクション100が贈る中国のジャンヌダルク 

ムーラン:心に残る中国映画セレクション100が贈る中国のジャンヌダルク、かのヴィッキー・チャオが中国の伝説のジャンヌダルクになりきった!

木蘭(ムーラン)は、中国の南北朝時代の故事「木蘭詩(木蘭辞)に登場する。武術に長けたことから、病弱な父の代わりに女であることを封じ戦地で戦った英雄ムーランの壮絶な生き様を描くアクション・スペクタクル! 突厥などが遊牧民族国家として、漢民族と北方で覇を競うようになる時代背景の下でこの叙事詩は生まれた。

映画の紹介

 戦いの歴史という荒波に翻弄された男女がたどる、悠々しくも切ないバトルアクション・エンターテイメントがリプライス! !


映画データ
出演: ヴィッキー・チャオ, チェン・クンシャオフー, イシー・チャン, フー・ジュン, ユー・ロングァン
監督: ジングル・マ
言語: 中国語
字幕: 日本語
時間: 114 分


ストーリー
 木蘭(ムーラン)が登場する故事「木蘭詩(木蘭辞)」は、中国の南北朝時代に作られた作者不明の古楽府のひとつ。「木蘭詩」は詩歌や戯曲・小説の題材となり、小説としては清代の「隋唐演義」(作:褚人穫)に木蘭のエピソードが収められています。
 武術に長けたことから、病弱な父の代わりに女であることを封じ戦地で戦った英雄ムーランの壮絶な生き様を描くアクション・スペクタクル!ヴィッキー・チャオ、チェン・クンほか出演



背景と見どころ
 ムーラン自体は伝説の英雄で、架空の人物だったとしても、その物語を生んだ時代背景が気になるが、どうも時代背景がはっきりしない。映画に出てくる柔然、魏軍、鉄を求める等から、柔然が勢力を持ち、魏軍と勢力を争った時代などを考え合わせると、魏晋・南北朝・隋・唐の時代辺りの物語と考えられる。隋の力が弱まり、唐が力を得るころには、突厥が柔然を滅ぼし、遊牧民族国家を形成し、モンゴル付近にいたチュルク系民族が力を得るようになる。この物語は5世紀~6世紀にかけての物語かなと推察する。

 そのような難しい話は別として、武装映画にも拘らず、しっとりとした情感にあふれた展開はすばらしいと思います。雄大な景色、砂嵐などの自然の猛威などが人間の争いをますます小さなものにしてしまうようでした。主人公のヴィッキー・チャオの魅力・・やはり素晴らしい。戦場で将軍として振舞わなければならないのにあの女らしさは、ありえないと思うのですが・・。もう少し将軍としての冷徹さと自分との戦いの葛藤が出せたらもっと良かったのじゃないかと思います。

ヴィキペディアによれば、柔然の衣食住の様式は以下の通りということ。
柔然の5C-6Cの勢力範囲地図
 夏は漠北で暮らし、冬になると漠南に移動し、また夏になると漠北に帰る。というように移動しながら狩猟・牧畜をして生活をしていた。中国のように城郭をもたず、氈張(穹盧)に住み、移動の際にはそれを折りたたみ、家財道具とともに轀車(おんしゃ:荷車、キャンピングカー)に載せて運搬する。入口は必ず太陽の昇る東側に向け、東面の座を上座とした。食物は酪(らく:乳製品)と肉を常食とし、穀物も食べていた。髪型は辮髪で、服装は錦・革製の短上衣、口の窄いズボン、深い靴、外套を身につけていた。

 映画の中でははっきりしなかったが、柔然の女性は辮髪のようであったが、男達は普通のザンバラ髪のようだ。しかし戦場の場面だけだし、細かいこと云えば限がない。娯楽映画としては、十分だろう。ついでに柔然の奴隷として、製鉄に携わっていた部族に、後にトルコの地域で一大帝国を築いた突厥がある。本当に人生何があるかわからないものだ。 


晋・南北朝に関する詳しい説明は 【晋・南北朝】 ☜ こらをクリックしてください
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2017年6月2日金曜日

太平洋戦争勃発前夜の血みどろの「上海」 これが戦場だ!

上海

渡辺謙の迫力が半端でない。

映画の紹介
AMAZONプライムビデオで提供された映画。中国映画と思いきやアメリカ中国の合作か?
 1941年第2次世界大戦さなかの上海は、各国のスパイが入り乱れて、血みどろの戦いが繰り広げられていた。折りしも日本は真珠湾攻撃を準備しつつあり、息詰まるスパイ戦が、各国の命運をかけて展開されていた。そして日本の真珠湾攻撃が為され、今まで形式上は中立を守っていたアメリカが参戦することとなる。


映画データ
主演:ジョン・キューザック, コン・リー, 菊地凛子
監督:ミカエル・ハフストローム


ストーリー
 主人公の米国諜報部員ポール(ジョン・キューザック)が降り立つ。彼の目的は、親友の死の真相究明。中国、アメリカ、日本を巡る巨大な陰謀の影と、執拗にポールをつけ狙う日本人将校、田中(渡辺謙)、亡き友が愛した女(菊地凛子)ら、謎多き者たちの存在。
 そして彼は遂に、事件のカギを握る裏社会のドン、アンソニー(チョウ・ユンファ)と、彼の美しき妻アナ(コン・リー)に辿りつく。このアナはその美貌を武器に、日本の軍事機密を狙うレジスタンス組織のメンバーだった。


背景と見どころ
 この映画の見所は、自分の生命を省みず、レジスタンスの戦いに奔走するアナ(コン・リー)とそれをかげながら応援するポール(ジョン・キューザック)の活躍であろう。コン・リーは血なまぐさい、どろどろした暗黒の泥沼に咲く一輪の白いユリにでも例えられる美しさと気品を持っている。彼らは、日本の将校の田中の毒牙から無事脱出できるか。手に汗を握るサスペンス。

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2017年6月1日木曜日

年老いた老将には老将なりの戦い方がある「三国志  趙雲」

「三国志」 趙雲

映画の紹介
三国志を代表する将軍だけにスポットを当てた映画。これまでの歴史ものとは少し視点を変え、趙雲の最後の戦いをクローズアップしている。
 関羽、張飛がなき今、敵の勢いを感じながらも、体力の衰えを隠し、敵の攻勢に耐え抜かねばならない男の悲哀が良く出ていた。
 しかし、ストーリーを重視したためか、史実とは離れた娯楽映画になってしまっている。乱世に生きた伝説の男趙雲“無敗の将軍”が挑む、最期の戦い。


映画データ
出演: アンディ・ラウ, マギー・Q, サモ・ハン, ヴァネス・ウー
監督: ダニエル・リー(李仁港)

香港の映画監督、脚本家
生年:1960年 香港生まれ
作品:項羽と劉邦、処刑剣、三国志他

ストーリー
戦乱の中国、絶え間ない争いによって国家は分裂されていた。
趙雲は祖国統一の夢を抱く平安と共に、蜀の名君、劉備に仕える。
西暦208年、魏の最高権力者曹操率いる大軍に攻められ、劉備の夫人と子供を見失ってしまう。
趙雲はたった1人で夫人らの救出に向かい、無事に帰参。
後に“五虎大将軍”に任命し、蜀の国に無くてはならない武将となっていった。
同年に起きた“赤壁の戦い”以降も20年間に渡り国を守り続けていた趙雲だったが、諸葛亮孔明と共に、「五丈原」での決戦に赴くこととなった辺りの話である。
 映画は蜀の国家存亡の危機、もはや名誉ある引退など許されない状況に追い込まれた趙雲に最大で且つ最後の危機が訪れる。



背景と見どころ
趙雲は劉備に最も信頼された将軍で、私も好きな武将だ。この映画は史実から離れて、単に娯楽映画になってしまっている。 この種の映画は、娯楽に徹するのもいいが、もう少し史実に忠実でないとと思っている。少なくとも歴史を変えてはいけないと思うのだが・・。

常山とは今はなく、上古の中国の九つの州の一つに数えられている。具体的な区域については、『周礼』では「河内」としており、今の河北省を中心とする地域を指しているものと思われる。ヴィキペディによると「常山郡 - 河北省石家荘市にかつて中国に存在した郡。常山国とも称された。 趙雲の出身地としても名高い。」とのことである。

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2017年5月31日水曜日

Lovers:心に残る中国映画セレクション100が贈る悲しい恋の物語

Lovers:心に残る中国映画セレクション100が贈る悲しい恋の物語

映画の紹介
 2004年夏に全国劇場公開された「LOVERS」。全盛を極めた唐王朝のほころびの中に咲くアダ花を巡る悲しい恋物語。王朝が衰退を始めた9世紀中頃の中国を舞台に、「HERO」のスタッフが贈るアクション超大作。金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイーほか出演。

映画データ
出演: 金城武, アンディ・ラウ, チャン・ツィイー
監督: チャン・イーモウ, トニー・チン・シウトン
言語: 中国語, 日本語
発売日 2005/01/28
時間: 120 分


ストーリー
  西暦859年、唐代の中国で、朝廷は反乱軍最大の『飛刀門』撲滅を画策。官史の金と瀏に、指導者を10日以内に捕らえるように命ずる。飛刀門の娘と思われる小妹は目が不自由で、金は反乱戦士を装い小妹に接近。捕らえられた彼女を救出するふりして、敵のアジトまで導かせようと企むが、旅の途中でふたりの心はひかれあってしまう。 小妹にチャン・ツィイー、金に金城武、瀏にアンディ・ラウ。金と小妹に別の人物がからんで三角関係になり、加えて、誰を信じていいのかわからないトリックも隠され、ストーリーは二転三転。仕掛けたっぷりのスリリングな作品だ。


背景と見どころ
  シナリオをまともに信ずれば。唐代の末期には様々な乱が発生している。中でもとりわけ有名なのは、黄巣の乱(875~884年)で、この映画の舞台より少し遅れている。
 859年には今の青海省あたりに力を持っていた南詔国の世隆が皇帝に即位して自立していた事に対処するために、匪賊化した徐州の驕兵を活用するというように、地方ではいわば無法状態が続いていた。

 この映画にかかれた様な徒党が実際に存在したか(どうでもいいこと)は不明だが、時代背景としては唐も崩壊をしていく過程にあった。地方を平定するため唐朝は節度使というような軍事機能を持たせた管理を配置するが、その制度そのものが唐の更なる崩壊に繋がっていく。

 見所は、エンターテインメント性をたっぷり含んだ展開は、見るものにあきさせない。無条件に面白かった。チャン・ツィイーの持つ蒼い色気、構成画面の美しさも見逃せない。芸術性も評価できる。




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2017年5月29日月曜日

中国版ハムレット 「エンペラー 女帝」

女帝 エンペラー

映画の紹介(「キネマ旬報社」データベースより)

 シェイクスピアの「ハムレット」をベースに、中国の宮廷を舞台に愛と欲望が交錯する復讐劇を描いたアクション大作。

 夫の先帝を殺された王妃・ワンと、父の仇を討つ決意を固める息子・ウールアン。それぞれ想いを秘め復讐の時を待っていたが…。


映画データ
出演: チャン・ツィイー, ジョウ・シュン, ダニエル・ウー, グォ・ヨウ, フォン・シャオミン
監督: フォン・シャオガン(漢字名:馮 小剛 1958年3月18日生まれ) 出身地:中国 北京

略歴
 中学を卒業してから中国人民解放軍陸軍北京軍区の文芸工作団に入る。
1977年に第38集団軍の宣伝隊に入り1978年に正式に第38集団軍へ入隊。
1985年に北京電視芸術中心に編入されアートディレクターを務める。のちに親友である葛優の紹介で上海国際映画祭に参加し、これを機に映画の世界へ足を踏み入れる。
2016年、第64回サンセバスチャン国際映画祭で、自身の監督作品『I am not Madame Bovary』(英題)が、ゴールデン・シェル賞(最優秀作品賞)を受賞。
第1回マカオ国際映画祭にて、生涯功労賞を受賞した。
言語: 中国語, 日本語
字幕: 日本語


  ストーリー
 乱世の五大十国時代、絢爛豪華な中国宮廷を舞台に愛と欲望を巡って繰り広げる女たちの復讐劇を描いた超一級歴史スペクタクル!西暦907年、空前の繁栄を誇った唐王朝が崩壊、皇帝と大臣が権力を奪い合い、皇室では父子、兄弟が殺しあう時代。

 ワンは先の皇帝の息子で継子の皇子ウー・ルァンに密かな思いを抱いていた。

 彼は宮殿とは離れた邸宅で暮らしていたが、父が暗殺されたという密書を受けて宮殿に戻ることを決意する…。


背景と見どころ
 この映画は中国唐朝が倒れて、五代十国という群雄割拠の時代、唐の節度使であった朱全忠は黄巣の乱でうまく立ち回り、力を得て唐の皇帝である哀帝から禅譲を受け、梁という国を建てた。

 朱全忠は元々淫乱であり、身内や家臣の妻に手を出し、権力はなかなか定まらなかった。

 たまたま自分の仮子である博王朱友文の妻王氏は美人だったので寵愛した。

 この映画は、この話をベースに「ハムレット」のシナリオで色付けしたFictionであるようだ。

   どろどろした人間関係、親や子供とも関係する血縁関係、辺境の複雑な権力関係が、物語を縦糸と横糸で色付けし、面白い物語にしている。

 話は変わるが、この主役はチャン・ツィイーには少し重過ぎる。未だ若々しさが抜け切ってなく、「女の業」が出ていない気がする。色と欲で皇后の座を射止めるには、もっとすさまじい女性だったと思う。(日本で言えば岩下志麻あたりかな。もう少し若いのであれば誰かな?

 この映画は時代考証は実にいい加減だと思うが、エンターテインメントに徹した娯楽番組である。歴史物とは見ないほうがいい。しかし、アートとしては優れた作品だと思う。すごく考えられた構図と映像。そして、殺陣を楽しむことでは、十分満足させてくれる。日本の殺陣と異なり、飛んだりはねたりする場面が多く、もう少し現実感を持たせてくれたほうがいいと思うのだが。それでも、やはり色のある女優です。

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2017年5月14日日曜日

近代中国の扉をこじ開けた男 「孫文-100年先を見た男」

孫文-100年先を見た男-

映画の紹介
今からから100年余年前!世界中に激震が走った。誰もがあの清朝が瀕死の状態にあることは認識していたにも拘らず、現実に倒れてしまうことは予想できなかったのではないだろうか。

映画データ
  • 出演: ウィンストン・チャオ(趙 文瑄),アンジェリカ・リー, ウー・ユエ, チャオ・チョン, ワン・ジェンチョン 
  • 監督: デレク・チウ(趙崇基)
ストーリー

1910年、中国近代国家への夜明けにつながる“革命前夜”。 亡命の地マレーシア・ペナン島を舞台に、度々の革命失敗の苦境と失意、そして暗殺の危険に遭いながらも、愛する人に支えられ、理想を失わなかった世界的革命家・孫文の闘いと愛の日々を描く一大歴史ロマン。

歴史的背景と見どころ
 辛亥革命から何を学ぶか?辛亥革命も当時の人々にとっては何故起こったのかわからなかったのかも知れない。昨年起こったイギリスのEU離脱の意思表示と同じ様に、「この世の中何が起こるかわからない」と見ていたのかもしれない。しかし、イギリス内部に蔓延していた、閉塞感を正しく見ていさえすれば、正しく予見する人間がいたのかもしれない。
 辛亥革命を現実に可能ならしめたのは、満州族の支配に対する閉塞感とも云われる。アヘン戦争で敗れるわ、大平天国の乱ではぐちゃぐちゃになるわ、外国列強や日本から好き勝手にされるわ、全てに亘って中国の民衆は劣悪な状態に置かれた。やがてそれは爆発し、民族主義的な熱情を噴出しながら突き進んだ。
 今全世界で起きているカオスのような出来事も、結局それを可能ならしめるものは、人々の貧富の差や失業生活不安、自分達の意志でどうにもならないという閉塞感が人々を突き動かしているとも云えまいか。とすれば、100年前に起こったと同じことが我々の目の前で起こっても不思議ではない。そして辛亥革命の激震が、ロシアに飛び火し、レーニンの率いる10月革命へと波及していったように。
 これからいかなる激震が我々を襲うだろうか? 我々はもっと賢くならなければならない。これが歴史から学ぶということだろう。
 それにしても主人公、趙 文瑄(ウィンストン・チャオ)のかっこよさ。冷徹なまでに研ぎ澄まされた革命家を好演している。すばらしい。



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