google.com, pub-2132796719425109, DIRECT, f08c47fec0942fa0 心に残る中国映画セレクション100: 6月 2017

2017年6月30日金曜日

中国人の中年の男女の大人の中国映画「花様年華」トニー・レオンとマギー・チャンの抑えた演技が光る

「花様年華」

成熟した中国映画の渋さを見せ付ける秀作。返還前の香港の浮世に漂う大人の男女の愛情は、「一線を越えた越えない」といった薄っぺらな話ではない。

映画の紹介
花様年華
「四十にして不惑」という言葉があるが、この映画は、まさしく不惑と煩悩との間をさまよう、渋い男と女の物語だ。そして、彼らは最後は不惑の世界に留まり、それぞれの道を何事もなかったかのように歩みだすことだろう。誰でもこうありたいと思うが、なかなかそうはいかないのが人生。この映画を一言で表せといわれたら「渋い」。それ以外の言葉は見つからない。

映画データ
出演: トニー・レオン, マギー・チャン, スー・ピンラン, レベッカ・パン, ライ・チン
監督: ウォン・カーウァイ(王家卫)
 略歴:1958年、上海に生まる。5歳で香港に移住。
 香港理工学院入学、グラフィック・デザイン(専攻)
 その後映画の脚本家を経て監督。

■ウォン・カーウァイ監督の作品
1988年、「いますぐ抱きしめたい」で監督デビュー。
1990年代、「欲望の翼」「恋する惑星」「天使の涙」などの青春群像劇を独特の語り口調と個性的な映像美で注目を集める。
2000年、「花様年華」
2000年代~「2046」「グランドマスター」など。

ストーリー
1962年、香港。
新聞社の編集者であるチャウと商社で秘書として働くチャン夫人。
二人は同じアパートに同じ日に引っ越して来る。
やがて、二人は互いの伴侶が不倫関係にあることに気付き、秘密の時間を共有していく…。



背景と見どころ
 この映画の題名「花様年華」は「花のようなきれいな時期」の意味で、「青春時代」を指す場合が多いということだが、青春というには少しトウが立ちすぎている気がするのだが・・。
 この映画の舞台設定は、1966年、香港。このころの香港といえば、中国への返還を控え、市民レベルでも、自分達の将来を見据え、どう動くべきかを見極めようとしていた時だ。映画の中にも、主人公のアパートの女主人がアメリカの娘の下へ行くという会話やシンガポールへの移住の話、みんな出て行くという会話の中にも出ている。当たり前かもしれないが、誰も中国に返還されるのだということを現実に感じていないようなところがある。中国はこのころは未だ文化大革命の真っ最中だった時代。
映画ではある種の閉塞感が全体に醸しだされていた。これも時代を反映した作品であった。




心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月29日木曜日

コンリーの美しさがひときわ引き立つ中国映画 「王家紋章」

王家の紋章

映画の紹介
 晩唐に起こった黄巣の乱で、中国は五代十国の乱世に突入する。その中の一つである後唐を舞台に繰り広げられた陰謀渦巻く権力闘争は、重陽節を軸に華やかな宮廷を血で染める。国王、王妃、皇太子、第二王子、第三王子の間の争いは行き着くところを知らない。コンリーの王妃はあくまで美しく、悲しくもある。

映画データ
主演 :チョウ・ユンファ, コン・リー, ジェイ・チョウ, リウ・イェ
助演俳優 :シン・ジュンジェ
監督 :チャン・イーモウ


 ストーリー 



背景と見どころ
この物語は、唐の末期に起こった黄巣の乱の平定に力のあった朱全忠が後梁を建てるが、この映画の中の王である李存勗は923年後梁を滅ぼす後唐を建てた。この後唐が舞台となっている。後唐の権力基盤はまだ脆弱で定まらず、権力闘争で揺れ動く。唐は終わり、乱世の五代十国の時代に突入する。この後唐は936年に滅んでいる。後唐の寿命は僅か13年の短いものであった。それでも後唐の勢力図は地図の通り、華北を制する広大なものであった。


心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月25日日曜日

返還前の閉塞感漂う香港で苦しむチンピラの純愛を描く中国映画「いますぐ抱きしめたい」

いますぐ抱きしめたい

映画の紹介
私がおすすめするのは、「いますぐ抱きしめたい」だ。最初は題からどんなかわいい映画かなと思ったら、中身は「やんちゃ」な映画だと感じた。しかし、はやり面白かった。最初は、この「抱きしめたい」というのは,誰を抱きしめたかったのか?はっきりしなかった。

 しかし、原題が「旺角卡門」(オウカクのカルメン)であることを知って、映画の意図と監督の云いたいことが何かを読み取ることが出来た。
 これは単なる、街のチンピラの恋と暴力を描いたものとは違い、イギリスの植民地の中の閉ざされた租界「旺角」の中の民衆のやりきれない閉塞感を代弁したものだ。
 香港映画界の鬼才、ウォン・カーウァイの監督デビュー作。
 キャッチフレーズは「香港の暗黒街に生きる青年の姿を独自の映像感覚で切り取った痛切なラブストーリー。」であるが、この話に終わらせてはいけない気がする。アンディ・ラウ、マギー・チャンが共演。



映画データ
原題:旺角(英語読み:モンコク)卡門(日本語の意味は、モンコクのカルメン)
ジャンル :ロマンス, ドラマ, アジアの映画
主演 : アンディ・ラウ, マギー・チャン, ジャッキー・チュン, アレックス・マン
監督 : ウォン・カーウァイ (王家卫)
言語: 広東語
字幕: 日本語
製作:1988年
時間: 99 分

ウォン・カーウァイについて
簡体字 王家卫(因みにこの漢字の読みは中国語の北京語によるものではなく、広東語の発音である)
出身地 中国香港
生誕 1958年7月17日 中国上海
職業 映画監督、脚本家
活動期間 1982– 
略歴 中国・上海出身、五歳のときに香港に移住。香港理工学院へ入学、グラフィック・デザインを学ぶ。卒業後テレビの現場を経て、脚本家として映画界にデビューした。

ストーリー
 香港の大繁華街モンコクに住む従兄アンディを訪ねたマギーは、ギャング組織を抜け出せずに、すさんだ生活を送っている彼に反発しながらも、心ひかれるものを感じていく。
 度重なる抗争に嫌気が差していた彼もまた、彼女のもとに身を寄せるように。しかし彼は、弟分ジャッキーの危機を知り、ジャッキーを思い留まらせようとある思いを秘めて、再び暗黒街へと向かった…。



背景と見どころ
 この映画が作られたのは1988年で、香港返還前である。この時は香港島と半島ともにイギリスの疎開地であったが、この映画の舞台となった地区は、当時の警察権も及ばない無法地帯であった。
 この映画はこの特殊な界隈の危険な状況を良く描き出していると同時に、その暗黒街の泥の中に生きる青年のうめき声が聞こえてくるようだ。




2017年6月22日木曜日

見るものの心が洗われる「北京ヴァイオリン」

北京ヴァイオリン

映画の紹介
 おすすめの映画、こころ洗われる映画だ。映画に対しても、音楽に対しても、観客に対しても、実に純粋で、誠実な映画だった。父親もさることながら、主人公のチュンを演じたタン・ユンが実にいい。
 これには余計なコメントは不要だ。無条件に全ての人に見てほしい。


 『さらば、わが愛 / 覇王別姫』 のチェン・カイコーが、父子の熱い絆をつづった感動作。天才的なヴァイオリンの腕前を持ちながら田舎町で暮らす少年・チュン。なんとか息子をヴァイオリニストとして成功させるため、父・リウはチュンを連れて北京へと旅立つ。


映画データ
出演: タン・ユン, リウ・ペイチー, ワン・チーウェン, チェン・ホン
監督: チェン・カイコー(陳 凱歌)
販売元: ジェネオン エンタテインメント
時間: 117 分

監督 陳 凱歌について
生年月日: 1952年8月12日
生まれ: 中華人民共和国 北京市
書籍: King of the children、 花の生涯-梅蘭芳(メイランファン)

代表作

  • 花の生涯~梅蘭芳(メイ ラン ファン)~ (2008) 監督  
  • 北京ヴァイオリン (2002) 監督/出演/脚本 ユイ教授
  • キリング・ミー・ソフトリー (2001) 監督  
  • 始皇帝暗殺 (1998) 監督/脚本/製作/出演  
  • さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき) (1993) 監督/製作
  • 黄色い大地 (1984)
ストーリー
 ヴァイオリンの才能ある息子を一流のヴァイオリニストとして成功させるために、貧しい父はお金をコツコツためて、息子と北京へ。
 そこで出会った人々との交流を通して、親子のきずなを描いたチェン・カイコー監督の感動作。



背景と見どころ
長江の下流に広がる穀倉地帯
(上海、無錫、揚州、南京、杭州、紹興、蘇州)
 主人公達が北京に出てくる前に住んでいた田舎町は多分江南の蘇州か紹興辺りの街だろうと思う。江南は北京に比べれば、田舎町ではあるが、昔から生活が豊かで、東北や北部のように異民族との抗争に明け暮れたところとは違い、落ち着いた街が並んでいる。











江南に関する詳しい説明は、
「中国百科検定」地理編の江蘇省、浙江省、安徽省 ☜ こちらをクリックしてください
心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月21日水曜日

文革を契機に大きく動き出す社会に翻弄される兄弟の物語「孔雀」孔雀の羽はいつ開く

孔雀

映画の紹介
 『さらば、わが愛 覇王別姫』などの名カメラマン、クー・チャンウェイが初監督を手掛けベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した感動ドラマ。
 文化大革命の騒乱の状況とは違った意味で、大きく動き出した文革後の激動の中国を舞台に、地方都市で慎ましやかに暮らす家族が時代に翻弄されながら織り成す、愛と哀しみに満ちた人生模様を綴る。


映画データ
出演: チャン・チンチュー『セブンソード』、ファン・リー、 ルゥ・ユウライ
フォアン・メイイン、チャオ・イーウェイ
監督: クー・チャンウェイ (顧長衛)
字幕: 日本語


監督: 顧長衛について
中華人民共和国陝西省西安出身の映画監督、撮影監督。
生年月日: 1957年12月12日
生まれ: 中華人民共和国 西安市
配偶者: ジァン・ウェンリー (1993年から)
学歴: 北京電影学院
受賞歴: Golden Rooster Award for Best Cinematography
作品: 最愛
ストーリー
 落下傘部隊の将校に恋した姉、知的障害がある気のいい兄、小さな町を飛び出した気弱な弟―。
待ち望んでも開かない孔雀の羽の様に、皮肉な運命に家族は翻弄され、そしてまた寄り添っていくしかない。
の  1977年、文化大革命は終焉する。人々は手にしたことのない自由を持て余し、迷いながら、歩きはじめた。


背景と見どころ
 紅衛兵の脅威も漸く去り、凶暴で、息を詰めて暮らした人々の生活にも落ち着きが帰ってきた1977年。とある田舎の田園地帯に突然人民軍の落下傘部隊が飛び降りた。
 真っ青な空から白いくらげがゆらゆら降りてくる。そしてそこに降り立った兵士は、男性も女性もはつらつとして、下から見上げていた田舎の変哲もない女子学生にとっては、まばゆく見える天使のようであった。
そこに住む人々は一様に貧しく、誰もが生活にもがいていた。しかし、家族は一時は離れ離れになるが、だれもその泥沼の底に沈むことなく、かといって華々しく飛び立つこともなく、それなりの家庭を持ちこの地に戻ってくる。


さてこの映画の舞台となっている鶴陽市というのはどこになるのだろう。グーグルMAPで検索してみたら、該当見当たらずということで、このような市は結局架空のものということになる。この都市が重要ではないが、珍しい名前(私には思えた)なので、もう少し当たってみると、小学校の名前にあった。お遊びで一応あげてみる。
ここは浙江省楽清市にある。楽清市は台州、恩州市に接し、歴史は古い。温州しは、宋の時代には「温州商人」の出身地として知られたところである。





心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

よく分からん映画「2046」

2046

映画の紹介
DVD「2046」のポスター
主演のトニーレオンとコン・リー二人だけのために作ったような作品。
 観てどうにもよくわからなかった。分からなくてもいい作品なのかもしれない。作品の中のセリフにも出てくるが、時間と暇をつぶすだけの意味はある。時には主人公達と一緒にそのような時間をすごすのもいいのでは?


映画データ
出演: トニー・レオン, 木村拓哉, コン・リー, フェイ・ウォン, チャン・ツィイー
監督: ウォン・カーウァイ (王家衛)
字幕: 日本語

監督 ウォン・カーウァイについて
ウォン・カーウァイは、香港の映画監督、脚本家。
生年月日: 1958年7月17日 (58歳)
生まれ: 中華人民共和国 上海市
身長: 183 cm

    ウォン・カーウァイの作品
  • 1988年 いますぐ抱きしめたい 旺角卡門 (兼脚本)
  • 1990年 欲望の翼 阿飛正傳 (兼脚本)
  • 1994年 恋する惑星 重慶森林 (兼脚本)
  • 1994年 楽園の瑕 東邪西毒 (兼脚本)
  • 1995年 天使の涙 墮落天使 (兼脚本)
  • 1996年 wkw/tk/1996@/7'55"hk.net wkw/tk/1996@/7'55"hk.net (短編作品)
  • 1997年 ブエノスアイレス 春光乍洩 (兼脚本)
  • 2000年 花様年華 花様年華 (兼脚本)
  • 2004年 2046 2046 (兼脚本)
  • 2004年 愛の神、エロス「エロスの純愛〜若き仕立屋の恋」 Eros - The Hand (オムニバス、兼脚本)
  • 2007年 マイ・ブルーベリー・ナイツ My Blueberry Nights (兼脚本)
  • 2007年 それぞれのシネマ「君のために9千キロ旅をしてきた」 To Each His Own Cinema - I Traveled 9,000 Km to Give It to You (オムニバス、兼脚本)
  • 2008年 楽園の瑕 終極版 東邪西毒 終極版 (兼脚本)……『楽園の瑕』の別編集バージョン
  • 2013年 グランド・マスター 一代宗師 (兼脚本)
ストーリー
 ストーりーはない。ある小説家の男が描く近未来小説をベースには展開するが筋だったストーリーはない。アンドロイドと人間が“失われた愛”をもとめてミステリートレインに乗り込み、未知の場所「2046」を目指す様を描いた近未来ラブストーリー。主演のトニーレオンとコン・リーが如何にしっとりした情感が出せるか?二人だけのために作ったような作品。

背景と見どころ
トニーレオンは少しニヒルな不良っぽい気障な中年男の雰囲気は出ていた。



心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月19日月曜日

中国映画:両親の死でバラバラになった兄弟が「再見! また会う日まで」

再見

映画の紹介

 文句なしに涙を流した。両親の不慮の死により離れて暮らすことになった兄妹4人。20年の時を経て再会を果たそうとするが…。ユイ・チョン監督が贈る感動物語。出演はジジ・リョン、ジャン・ウーほか。


映画データ
出演: ジジ・リョン, ジャン・ウー, シア・ユイ
監督: ユイ・チョン (兪鍾)

中国人監督・兪鍾(ユー・チョン)について

兪鍾(ユー・チョン)は北京電影学院出身の映画監督。彼の手がけたものに『我的父親(私の父親)』『我的兄弟姐妹(私の兄弟)』などがあり、家族の絆を描く作品で高い評価を受けている。
字幕: 日本語


ストーリー
 両親の死により、4人の子供たちが、色々の人に預けられ離れ離れに暮らすことになった。兄は幼い弟や妹達のため、必死になって養育先を探す。20年間はそれぞれが必死に生きたであろうことは、いちいち書くまでもない。

背景と見どころ
 4人もいれば一人ぐらい拗ねたのも出てきても不思議はないが、この映画のいいところは、そのような安易な問題提起を出さず、基本的には全員のしっかりした生き方を通して、社会の矛盾を告発していることではないだろうか。
 時代や感覚こそ違うかもしれないが、今こそ日本の子供や青少年全員に見て欲しい映画だ。

 この映画の舞台設定は、優れた才能を持ちながらも、文化大革命のさなかに云われなきそしりを受け、主人公とその家族5人が悲惨な生活を強いられる。

 文化大革命の中では、この主人公のような犠牲はまだ軽いほうで、現実には、文化大革命という「非文化革命」という激動の中で、暴力そのもので命を落とした、映画人は数知れない。

 「中国百科 文化芸術編」の「文化大革命と映画界」の中で、その辺りに詳しく触れられているので、以下参照願いたい。しかも残念なことに、「この文化大革命」の総括は、未だしっかりと為されたとは云えず、今尚その残渣に苦しんでいる人々がいる。

詳しい説明は 【文化大革命と映画界】 ☜ こちらをクリックしてください

心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

モンゴル人が描くジンギス汗のモンゴル統一の戦いを描く「モンゴル」

モンゴル

映画の紹介
  中国百科映画館がおすすめする中国映画ではない「モンゴル」・・日本人のたち位置が分かる!


本年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。 史上最強の統率者チンギス・ハーンの、知られざる半生を描いたスペクタクル超大作。

 この映画の時代は、日本で言えばちょうど鎌倉幕府が誕生した時代に相当する。
 この映画の舞台となったモンゴル平原とゴビ砂漠と日本の自然との違い。義経がジンギスハンになったという伝説もあるが、この映画を見ればそれが如何にあり得ないことかわかるのではないか。
 美しい自然に恵まれた日本人はどうしてあの荒ぶる大自然と荒ぶる民の中に生きることが出来ようか。
 この映画は、日本人の立ち位置は如何にあるべきかを知らしめるよき教材になった。






映画データ
浅野忠信/スン・ホンレイ/クーラン・チュラン
監督・脚本・製作:セルゲイ・ボドロフ

ストーリー
  未だこの世が暴力と暴虐に支配されていた時代、モンゴルでは多くの部族がその覇を求めてせめぎあっていた。その一部族の頭領の息子として生まれたテムジンを待ち受けていたのは、父親の毒殺、背信、そして異国で奴隷として獄につながれるという過酷な試練。
 しかし、彼の不屈の闘志はその試練を撥ね退け、さらわれた妻とその子を救い出し、他部族の子にも拘らず、自分の子として育てる。彼はやがて、寛容と包容力で次第に部族を統合し統率者として任じていく。
 この世に二人の覇者は要らない。義兄弟にして宿敵の勇士ジャムと覇を決する戦いで相見えることとなる。
 ジャムとの戦いでハーンとなった男はジンギスハーンとして、更なる世界制覇の道に押し出されてくる。



背景と見どころ
 この映画の中で度々繰り返される会話。「モンゴル人は○○じゃないの?」「俺は違う!」この常識にとらわれない、強烈な個性が、かれをモンゴル大帝国のハーンへと導いたのではないか。勿論今ではこの価値観、世界観は通用するものではない。では今ではどういう世界観が要求されるのだろうか。
 それは、「世界全体を見渡した上で、色々の価値観を相互に認め合い、相手を納得させる寛容と説得力」ということになるだろうか? 余りにきれいごとかもしれないが、しかし今では互いに我を張り合っていたのでは、世界は滅亡してしまうような気がする。
 人間は既に地球を余裕のない状態にまで持っていってしまっている。人間よ賢くなれ!


心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月18日日曜日

中国版「お葬式」の「ハッピーフューネラル」お迎えはまだ早いという方も、もうそろそろという方も自分の葬式を考え直すきっかけにしては!

ハッピーフューネラル

映画の紹介
「遺言は笑って泣けるお葬式」喜劇であるが、実に真面目に人間を真正面から捉えた素晴らしい映画。改めてフェン・シャオガン監督に惚れ直した。
素晴らしい映画だ。なんでもビジネスにしてしまう中国人の逞しさがなんとなくユーモラスがあって、滑稽だ!


映画データ
ジャンル:ドラマ, 外国映画, コメディ
主演 :ドナルド・サザーランド, ポール・マザースキー, グォ・ヨウ, ロザマンド・クワン
監督 : Feng Xiaogang (馮小剛)

生年月日: 1958年3月18日 (59歳)
生まれ: 中華人民共和国 北京大興区

主な作品

  • 夢の請負人(1997)
  • 遥かな想い チャイニーズ・ドリーム in U.S.A(1998)
  • ミレニアム・ラブ(1999)
  • 一声嘆息(2000)
  • ハッピー・フューネラル(2001)
  • 手機(2003)
  • イノセントワールド -天下無賊-(2004)
  • 女帝 [エンペラー](2006)
  • 戦場のレクイエム(2007)
  • 狙った恋の落とし方。(2008)
  • 唐山大地震(2010)
  • 狙った恋の落とし方。(2010)
ストーリー
 中国の紫禁城で撮影中のハリウッドの巨匠ドン・タイラー監督は膨⼤な資⾦を掛けているにもかかわらず、アイディアに⾏き詰まり撮影を⼀旦中⽌、監督交代を迫まられ消耗していた。
 ある⽇タイラーは助⼿のルーシーやカメラマンのヨーヨーから、中国人には、大往生を祝う"喜葬"の考え方があることを知る。タイラーはそれを"喜劇葬式【コメディ・フューネラル】とおもしろがり、自分の葬式は、この形にしてくれと言う。
 数日後、タイラーは突如、意識不明に陥入り、危篤状態に。"喜劇葬式【コメディ・フューネラル】"が、彼の遺言と考えたヨーヨーは、彼の喜んでくれる葬式をしようとプロモーターのワンと計画を⽴て始めるのだが・・・。


背景と見どころ
 リストラされた撮影助手が、自分を認めてくれた監督が撮影現場で倒れる前に残した言葉「自分の葬式は楽しい葬式にしてくれ」を遺言と考え、監督の想いを一生懸命実現しようとする。
 主人公の監督に対する一途な思いとそれを支える助手。葬式をも、ありとあらゆるものをコマーシャルにして一儲けしようとする有象無象の輩たち。商業主義を思い切り皮肉った、真面目にして滑稽な作品。




心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月17日土曜日

スクリーンの裏から中国人の怨嗟が聞こえる「南京!南京!」好ききらいは別にして、一度はぜひ!

映画「南京!南京!」を見て

南京事件の背景
「三十万人」という数字を基軸に延々と続けられてきた論争。映画にせよ、何にせよ、「南京」を抜きにしてして中国を語ることはできない。という気持ちでこの映画を見た。
 何はさておき南京がどこにあるかだが、南京は上海の西約200Kmのところにある揚子江沿いの古い歴史のある街である。この映画の舞台となったときは、中国が2000年の絶対的な皇帝政治から抜け出したばかりの時代であった。

















 映画「南京!南京!」へのコメントを見ていると、この事件の時代的背景がきちんと把握されていないための誤解や中傷(或いは無視)が多く見受けられるので、映画そのものの感想に入る前に、南京事件の時代的背景少し考えて見たいと思う。

 辛亥革命~南京事件まで、中国の置かれた政治的状況や南京事件の経緯について、

詳しい説明は 【辛亥革命から南京事件】 ☜ をクリックしてください

 Webなどでコメントを見ると、「中国」というと何でもかんでも「共産党」という名前が頭に浮かぶ方が多いようですが、南京事件は当時実権を握っていた国民党政府の支配下にあった南京に対してなされた残虐行為であるわけで、これを中国共産党のプロパガンダであるがごとき論調があるのは歴史が見えていない証左ではなかろうか。政治的主張は主張として、歴史的な真正面に据えて検証されなければならないと感じる。

 南京事件で日本軍と対峙していた部隊の主力は蒋介石の国民政府軍 中国共産党の部隊や八路軍は国民政府軍の中に組み入れられた状態にあった。つまり、この時代の中国共産党の武装勢力はそれまでの国共内戦でかなり消耗していたわけで、南京事件のあたりでは、中国共産党として単独で日本軍に対置する体力は少なくともなかったと思われる。
 そして「南京事件」の起こった国民政府軍は、日本軍が南京を占領したために武漢、重慶に場所を移しながら、抵抗を続けることとなります。






映画「南京!南京!」に示された中国映画の新しい視点
 映画「南京!南京!」はこのように、防備してくれるはずの軍隊もなく、わずかな治安部隊だけで、南京を防衛し壊滅していく状態を、中国人からの目線ではなく、侵略占領した「日本軍」の目線を借りて描いたものです。
 南京という占領地の中で全体的な権力を持つ日本軍の指揮官にも焦点を当て、その人の持つ人間性をも炙り出した中国映画です。
 その意味で、今までの中国映画の「抗日映画」とは、一味違ったものになっています。
 そしてその視点は、中国映画が従来の路線だけでは、中国の大衆を満足させられなくなってきたということを表していると思います。その変化をあなたもぜひ感じてみてください。
 ここに描かれるのは、華々しい闘いの舞台ではなく、痛々しくも悲しすぎる絶望の中にある人々の勇気ある英雄的な行動の記録です。
 この映画は戦闘に焦点を当てるというより、南京という絶望的な状況の中で、むしろ個人に焦点を当てて、その人々がどのように困難に立ち向かっていったかを描いた貴重な作品だと思う。



心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月12日月曜日

単純に娯楽映画「少林寺三十六房」あまり考えなくてもいい映画ですので、いい薬?

少林寺三十六房

映画の紹介
ラウ・カーリョン監督 × リュー・チャーフィーが贈る伝説の「少林寺」映画がお得な価格で登場! タランティーノが“カンフー映画史上最高の3本に入る"と評した傑作!
 この手の映画はあまり考えなくなくていいのがミソ。 だけどこのサイトでは、やはり少しは考えていただくことにしよう。



映画データ
出演: リュー・チャーフィー
監督: ラウ・カーリョン
言語: 中国語, 日本語


ストーリー
清の時代、父と友人を殺された青年リュー・ユウダが、武術の総本山・少林寺でサンダの僧名を授かり、三十五の修行房での特訓の果てに、得意の三筋棍で清の悪将軍に戦いを挑む。


背景と見どころ
 明から清に時代が変わるときは、漢民族の支配から女真族の支配を受け入れなければならないという漢民族にとっては、屈辱的、生理的な拒否反応が全国各地で見られたようだ。そのもっとも著名なものは、この映画にも出てくる鄭成功による反乱である。この話は近松門左衛門の「国姓爺合戦」で有名なのでご存知の方も多いだろう。
 又その他揚州の「史可法の抵抗」である。この抵抗戦は、近年になって揚州出身の主席江沢民がこの史可法を英雄として持ち上げたことによりクローズアップされたが、私はこの男は日本の明治維新の時の近藤勇と変わりはなく、何で彼が民族の英雄として評価されたのか理解に苦しむ。




心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月11日日曜日

中国映画というより中国を舞台にしたフランス映画「中国の植物学者の娘たち」詩的で官能的なラヴ・ストーリー

中国の植物学者の娘たち

映画の紹介
中国百科映画館がお薦めの映画「中国の植物学者の娘たち」
  ――官能的なラヴ・ストーリーに込められた監督の真のメッセージは??

◆愛の囁きが、ふたりの楽園にひそやかに沁み込んでいく
  ――詩的で官能的なラヴ・ストーリー!
◆2006年モントリオール世界映画祭 最優秀芸術貢献賞&観客賞受賞


映画データ
出演: ミレーヌ・ジャンパノワ, リー・シャオラン, グエン・ニュー・クイン
監督: ダイ・シージエ(戴思杰)

監督のプロフィール
出生: 1954年3月2日
出身地: 中国福建省
職業: 映画監督、作家
簡体字: 戴思杰
言語: 中国語, 日本語
発売日 2011/10/21


ストーリー
湖の小島で外界と隔絶して暮らす植物学者の元に、孤児の少女ミンが実習生として赴任する。 学者の娘アンもまた母を亡くしており、2人は深く共感しあっていく。

背景と見どころ
 植物園という閉ざされた秘密の花園。薬草を蒸したベッドで戯れ、人知れずタブーを破る孤独な二人の美しい女性の禁断の同性愛を描く、究極のエロティック・ラブストーリー!激しく純粋に求め合い、永遠の愛を願う二人には、残酷な運命が待ち受けていた。二人の許されざる愛が迎える衝撃のラストとは…。

 この映画は、中国の河北省の唐山を舞台としているが、唐山は1976年に起こったマグニチュード7.5の「唐山地震」の震源となったところだ。この地を舞台に選んだ理由は何なんだろうと考えさせられる。
 ミンが赴任する際にお土産として持ち込んだオウムが「毛沢東万歳」というシーンが出てくるが、これがこの監督の反体制のメッセージと思う。このスローガンを人ではなく、何も考えることのない鸚鵡にいわせることで、毛沢東礼賛の気風が色濃く残っていることを示し、それが人々から「自由」を奪っているのだということを言いたかったのだと思う。
 しかし、このような考え方そのものが、毛沢東が「文芸講話」の中で、最も批判したことであり、今なお中国がその呪縛から抜けきっていない「毛沢東思想」と真っ向から対立するものなのだ。



 唐山地震(とうざんじしん)の概要
1976年7月28日3時42分(現地時間、UTC+8)に中華人民共和国河北省唐山市付近を震源として発生したマグニチュードMw7.5の直下型地震である。市街地を北北東から南南西に走る断層に沿って大きな水平右ずれが発生し、当時有数の工業都市であった唐山市は壊滅状態となった。死者数は中国発表で約25万、アメリカの地質調査所の推計では65.5万人となっている。
 この地震による死者は公式記録によれば242,419人を数え、これは20世紀最大の地震被害である。当時中国は文化大革命の終焉時期ではあるが、未だ余韻の残っていた時であり、政府は「自力で立ち直る」と外国からの援助を拒否した。このことが犠牲者の拡大をもたらした一因だといわれている。



心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月7日水曜日

「ムーラン」:心に残る中国映画セレクション100が贈る中国のジャンヌダルク 

ムーラン:心に残る中国映画セレクション100が贈る中国のジャンヌダルク、かのヴィッキー・チャオが中国の伝説のジャンヌダルクになりきった!

木蘭(ムーラン)は、中国の南北朝時代の故事「木蘭詩(木蘭辞)に登場する。武術に長けたことから、病弱な父の代わりに女であることを封じ戦地で戦った英雄ムーランの壮絶な生き様を描くアクション・スペクタクル! 突厥などが遊牧民族国家として、漢民族と北方で覇を競うようになる時代背景の下でこの叙事詩は生まれた。

映画の紹介

 戦いの歴史という荒波に翻弄された男女がたどる、悠々しくも切ないバトルアクション・エンターテイメントがリプライス! !


映画データ
出演: ヴィッキー・チャオ, チェン・クンシャオフー, イシー・チャン, フー・ジュン, ユー・ロングァン
監督: ジングル・マ
言語: 中国語
字幕: 日本語
時間: 114 分


ストーリー
 木蘭(ムーラン)が登場する故事「木蘭詩(木蘭辞)」は、中国の南北朝時代に作られた作者不明の古楽府のひとつ。「木蘭詩」は詩歌や戯曲・小説の題材となり、小説としては清代の「隋唐演義」(作:褚人穫)に木蘭のエピソードが収められています。
 武術に長けたことから、病弱な父の代わりに女であることを封じ戦地で戦った英雄ムーランの壮絶な生き様を描くアクション・スペクタクル!ヴィッキー・チャオ、チェン・クンほか出演



背景と見どころ
 ムーラン自体は伝説の英雄で、架空の人物だったとしても、その物語を生んだ時代背景が気になるが、どうも時代背景がはっきりしない。映画に出てくる柔然、魏軍、鉄を求める等から、柔然が勢力を持ち、魏軍と勢力を争った時代などを考え合わせると、魏晋・南北朝・隋・唐の時代辺りの物語と考えられる。隋の力が弱まり、唐が力を得るころには、突厥が柔然を滅ぼし、遊牧民族国家を形成し、モンゴル付近にいたチュルク系民族が力を得るようになる。この物語は5世紀~6世紀にかけての物語かなと推察する。

 そのような難しい話は別として、武装映画にも拘らず、しっとりとした情感にあふれた展開はすばらしいと思います。雄大な景色、砂嵐などの自然の猛威などが人間の争いをますます小さなものにしてしまうようでした。主人公のヴィッキー・チャオの魅力・・やはり素晴らしい。戦場で将軍として振舞わなければならないのにあの女らしさは、ありえないと思うのですが・・。もう少し将軍としての冷徹さと自分との戦いの葛藤が出せたらもっと良かったのじゃないかと思います。

ヴィキペディアによれば、柔然の衣食住の様式は以下の通りということ。
柔然の5C-6Cの勢力範囲地図
 夏は漠北で暮らし、冬になると漠南に移動し、また夏になると漠北に帰る。というように移動しながら狩猟・牧畜をして生活をしていた。中国のように城郭をもたず、氈張(穹盧)に住み、移動の際にはそれを折りたたみ、家財道具とともに轀車(おんしゃ:荷車、キャンピングカー)に載せて運搬する。入口は必ず太陽の昇る東側に向け、東面の座を上座とした。食物は酪(らく:乳製品)と肉を常食とし、穀物も食べていた。髪型は辮髪で、服装は錦・革製の短上衣、口の窄いズボン、深い靴、外套を身につけていた。

 映画の中でははっきりしなかったが、柔然の女性は辮髪のようであったが、男達は普通のザンバラ髪のようだ。しかし戦場の場面だけだし、細かいこと云えば限がない。娯楽映画としては、十分だろう。ついでに柔然の奴隷として、製鉄に携わっていた部族に、後にトルコの地域で一大帝国を築いた突厥がある。本当に人生何があるかわからないものだ。 


晋・南北朝に関する詳しい説明は 【晋・南北朝】 ☜ こらをクリックしてください
心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月2日金曜日

太平洋戦争勃発前夜の血みどろの「上海」 これが戦場だ!

上海

渡辺謙の迫力が半端でない。

映画の紹介
AMAZONプライムビデオで提供された映画。中国映画と思いきやアメリカ中国の合作か?
 1941年第2次世界大戦さなかの上海は、各国のスパイが入り乱れて、血みどろの戦いが繰り広げられていた。折りしも日本は真珠湾攻撃を準備しつつあり、息詰まるスパイ戦が、各国の命運をかけて展開されていた。そして日本の真珠湾攻撃が為され、今まで形式上は中立を守っていたアメリカが参戦することとなる。


映画データ
主演:ジョン・キューザック, コン・リー, 菊地凛子
監督:ミカエル・ハフストローム


ストーリー
 主人公の米国諜報部員ポール(ジョン・キューザック)が降り立つ。彼の目的は、親友の死の真相究明。中国、アメリカ、日本を巡る巨大な陰謀の影と、執拗にポールをつけ狙う日本人将校、田中(渡辺謙)、亡き友が愛した女(菊地凛子)ら、謎多き者たちの存在。
 そして彼は遂に、事件のカギを握る裏社会のドン、アンソニー(チョウ・ユンファ)と、彼の美しき妻アナ(コン・リー)に辿りつく。このアナはその美貌を武器に、日本の軍事機密を狙うレジスタンス組織のメンバーだった。


背景と見どころ
 この映画の見所は、自分の生命を省みず、レジスタンスの戦いに奔走するアナ(コン・リー)とそれをかげながら応援するポール(ジョン・キューザック)の活躍であろう。コン・リーは血なまぐさい、どろどろした暗黒の泥沼に咲く一輪の白いユリにでも例えられる美しさと気品を持っている。彼らは、日本の将校の田中の毒牙から無事脱出できるか。手に汗を握るサスペンス。

心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

2017年6月1日木曜日

貧困から抜け出せない若者の苦悩と諦観を描く「故郷の香り」

故郷の香り

中国映画そのものの清純さを表現したような映画だ。中国の映画の魅力はここにある気がしてならない。
映画の紹介
「山の郵便配達」のフォ・ジェンチイ監督が贈る感動の物語。美しい山村を舞台に、せつない運命に揺れ動く男女の心の絆を描いている。
日本人の映画監督だったら、どんな描き方をするだろうか? 限界部落とかいうような経済的側面をテーマにするような気がする。いい悪いの問題でなく、時代性というか環境というか、日本は中国から遠くへ来たんだなという感じだ。



映画データ
出演: グオ・シャオドン, リー・ジア, 香川照之
監督: フォ・ジェンチイ(霍建起)

作品:台北に舞う雪、初恋の想い出、初恋の想い出
言語: 中国語, 日本語


ストーリー
故郷を出て、北京で家庭を持ち、10年ぶりに帰郷したジンハーが、幼なじみで初恋の相手だったヌアンと再会。
彼女に夫と娘がいることを知った彼は、かつての恋心を甦らせていく。
現在と10年前が交互に描かれ、ジンハー、ヌアンそれぞれの秘めた心の内が少しずつ明らかになる過程が繊細に綴られていく。
映像の美しさが一級品。村の自然や、人々の暮らしを静謐にとらえ、観る者の心を癒していく。
物語のカギとなるのがブランコだが、乗った者の視点に合わせ、高く舞い上がっていく映像が、村の景観を見せながら、主人公たちのときめく心を表現。自分に想いを寄せるジンハー、村に公演に来た京劇役者、そして現在の夫と、それぞれの男に対するヌアンの複雑な想いが共感を誘う。



背景と見どころ
 フォ・ジェンチイ監督が『山の郵便配達』に続き、のどかな村を舞台にピュアな物語を紡ぎだした。
主演ふたりの誠実な演技に加え、ヌアンの夫で、口がきけないヤーバ役を香川照之が熱演。今もなお、心の片隅に消えない過去の傷を持つ人には、とことん切ない一編になるはずである。
 どこまでも美しい故郷の風景、しかしそれは同時にそこから抜け出せない人々を捕らえる足枷となる。その村々に働き口がないために、そこに住む人々は、貧しい生活を強いられる。一口に南北問題というが、この映画を見て、その解決は楽ではないと思わせた。




心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

年老いた老将には老将なりの戦い方がある「三国志  趙雲」

「三国志」 趙雲

映画の紹介
三国志を代表する将軍だけにスポットを当てた映画。これまでの歴史ものとは少し視点を変え、趙雲の最後の戦いをクローズアップしている。
 関羽、張飛がなき今、敵の勢いを感じながらも、体力の衰えを隠し、敵の攻勢に耐え抜かねばならない男の悲哀が良く出ていた。
 しかし、ストーリーを重視したためか、史実とは離れた娯楽映画になってしまっている。乱世に生きた伝説の男趙雲“無敗の将軍”が挑む、最期の戦い。


映画データ
出演: アンディ・ラウ, マギー・Q, サモ・ハン, ヴァネス・ウー
監督: ダニエル・リー(李仁港)

香港の映画監督、脚本家
生年:1960年 香港生まれ
作品:項羽と劉邦、処刑剣、三国志他

ストーリー
戦乱の中国、絶え間ない争いによって国家は分裂されていた。
趙雲は祖国統一の夢を抱く平安と共に、蜀の名君、劉備に仕える。
西暦208年、魏の最高権力者曹操率いる大軍に攻められ、劉備の夫人と子供を見失ってしまう。
趙雲はたった1人で夫人らの救出に向かい、無事に帰参。
後に“五虎大将軍”に任命し、蜀の国に無くてはならない武将となっていった。
同年に起きた“赤壁の戦い”以降も20年間に渡り国を守り続けていた趙雲だったが、諸葛亮孔明と共に、「五丈原」での決戦に赴くこととなった辺りの話である。
 映画は蜀の国家存亡の危機、もはや名誉ある引退など許されない状況に追い込まれた趙雲に最大で且つ最後の危機が訪れる。



背景と見どころ
趙雲は劉備に最も信頼された将軍で、私も好きな武将だ。この映画は史実から離れて、単に娯楽映画になってしまっている。 この種の映画は、娯楽に徹するのもいいが、もう少し史実に忠実でないとと思っている。少なくとも歴史を変えてはいけないと思うのだが・・。

常山とは今はなく、上古の中国の九つの州の一つに数えられている。具体的な区域については、『周礼』では「河内」としており、今の河北省を中心とする地域を指しているものと思われる。ヴィキペディによると「常山郡 - 河北省石家荘市にかつて中国に存在した郡。常山国とも称された。 趙雲の出身地としても名高い。」とのことである。

心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。  

中国の奥深い自然の中で繰り広げられる美しくも悲しい「剣を巡る」闘い「グリーンデスティニー」

グリーデスティニー

映画の紹介
第73回アカデミー賞4部門(外国語映画賞/撮影賞/作曲賞/美術賞)受賞。 興奮と陶酔のマーシャルアーツ・エンタテインメント!

映画データ
出演: チョウ・ユンファ, ミシェル・ヨー, チャン・ツィイー, チャン・チェン, ラン・シャン
監督: アン・リー(李安) 台湾の外省人映画監督である。
言語: 中国語, 日本語

受賞歴: アカデミー監督賞二回、ゴールデングローブ賞 監督賞二回
生年月日: 1954年10月23日 (62歳)
中華民国 潮州鎮生まれ
学歴: イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校
受賞歴: アカデミー監督賞、 アカデミー外国語映画賞、 金獅子賞、 金熊賞

ストーリー
400年前に作られ、太古のパワーに満ちた秘剣“グリーン・デスティニー"。
その使い手として名を轟かせる英雄リー・ムーバイと、女弟子シューリン。
貴族の娘イェンと、盗賊の頭ロー。
神秘の名剣に魅せられた4人の男女の死闘、復讐、そして運命の恋・・・。



背景と見どころ
中国の奥深い山奥で繰り広げられる死闘。ワイヤーを駆使した目まぐるしい殺陣。何よりも美しい光景の中で鮮やかな色彩美で、見るものの眼を楽しませてくれる。
 最初の導入の主人公のリー・ムーバイが登場する場面は中国の文化遺産の「安徽省の古民家」だし、格闘の場面でも舞台となったのが、やはり世界遺産に登録されている「土楼」だ。このような文化的背景を楽しむのも映画の醍醐味かもしれない。

心に残る中国映画セレクション100のホームページに戻ります。