google.com, pub-2132796719425109, DIRECT, f08c47fec0942fa0 中国映画おすすめ100選への道: 命をかけてカモシカを護る男たちに捧げる挽歌「ココシリ」

2017年5月8日月曜日

命をかけてカモシカを護る男たちに捧げる挽歌「ココシリ」

密猟者とココシリ山岳隊の壮絶な戦い

映画「ココシリ」の舞台と背景

上の地図の赤い線で囲まれた部分が青海省で
そのほぼ中央の少し西よりの星印が「ココシリ自然保護区」です
 映画の題名にある「ココシリ」は中国青海省にある地名です。中国の中央部に位置する青海省、そして又その真ん中にある平均海抜4,700m、中国最後の秘境と呼ばれるココシリ自然保護区。
 この地域に棲息するチベットカモシカは、この地域に100万頭が生息していたとされますが、その毛皮が高値で取引されることから1985年以降乱獲が進み、わずか数年で1万頭にまで生息数が激減したそうです。これを取り締まるために民間のパトロール隊が結成され、摘発と保護のため、密猟者達と命がけの戦いを繰り広げました。
 この映画は、中国の最後の秘境と呼ばれる青海省の奥深い山間を舞台に繰り広げられる、チベットカモシカの密猟者とそれを追う民間パトロール隊の苦闘を描いたドキュメント風の物語です。




映画のあらすじ
 物語は、ある日、隊員が密猟者に殺される事件が発生。ガイはココシリに入り、密猟者を追う隊員に随行して取材を開始した。
 しかしその取材は、美しいが、密猟者にも山岳隊の隊員達にも同じ様に牙をむく自然の中で、自らの命を賭して密猟者達を追う、リータイ達と生活のためには密猟者の手先とならなければならない農民や猟師たちの泥沼の戦いであった。
 ガイは隊員らと山に入って3日目、湖畔で無数のチベットカモシカの死体を発見し、7日目に密猟者たちを発見し、隠していた毛皮も発見する。しかし捕らえたのは、毛皮をはぐ手伝いをしただけの農民たちだった。彼らもまた生計を立てるために密猟者の手伝いをしなければならなかった。
8日目、捕らえていた農民たちが逃亡、彼らを追いかける際に隊員の一人が肺気腫で倒れる。リータイは隊員を町の医者に見せるようリウに命ずる。また、農民たちを伴ったまま主犯を追うことは食料、燃料ともにもたないことから、リータイは彼らをその場に残すことを決めた。
10日目、隊の車の1台に燃料切れが発生、リータイは後から追いかけてくるはずのリウを待つよう指示し、なおも主犯を追った。
 しかし17日目、町から山に戻ってきていたリウは、誤って流砂に飲み込まれてしまう。一方同じ頃、リータイたちは山越えをしようとしていた主犯たちに追いつくが、逆に撃たれて命を落とす。

映画の見所
 隊長のリータイや多くの隊員たちが、密猟者の手にかかったり、事故によってその命をおとすという悲劇で終わるが、この出来事を報じたレポーターの記事によって、世の中に知られることとなり、この地区は自然保護区に指定され、一時種の保存すら危惧されていた、チベットカモシカの個体数も3万頭に回復したといわれる。
 なぜ、予算も要員も設備もない、見返りもない。しかも自分の命を賭してまで彼らは、ココシリ山岳隊の活動にこだわるのか。隊長にリータイは「このココシリを守らなければいけないのだ」と。それはボランティア活動というより宗教であるかのように感じました。「環境を守る」などというお題目でもなく、きれいごとでもない。毎日の生活はそのようなきれいごとでは済まされない。美しい環境は、その中に生きている人々が、祈りにも似た宗教活動のように、何も期待せず、黙々と「環境を守るという営み」を繰り返して初めて守られるものではないかと思いました。行政に守ってくれと願う前に、住民達が自らの手で守るのだという固い決意と努力が行政を動かし、世の中を変えるのだと感じています。
 また行政はそのよう安人々の営みに甘えてはならない。甘えは結局のところ怠慢にしかならず、自らの首を絞めることになってしまうのだとこの映画は教えてくれました。

最後に
 この映画の監督は陸川監督です。彼は中国映画の「第6世代」といわれています。第6世代とは、90年代以降に頭角を現してきた監督達です。90年代は、中国社会の改革が一層進んだことで、さまざまな社会矛盾が現れ始めた時期です。そんな中、社会の底辺で苦悩する人々の姿を描く、身近な題材をモチーフにした作品が増えてきます。この世代は、決して派手さはありませんが、淡々と人間の心理を描いた個性的な作品が多いのが特徴だと思います。

中国の第6世代監督についての詳しい説明は 【中国国際放送局】を参照しました。

 私は陸川監督の映画は「南京!南京!」に続いて、この「ココシリ」で2作目になりますが、先の「南京!南京!」は従来の中国映画と違って、日本人の目から見た「南京」という全く違った視点と細やかな心理描写がすばらしいと感じています。特に加害者たる日本人憲兵の「角川正雄」の人間性と日本兵という立場の間にゆれる心の葛藤、そして最後の小豆子親子が死の世界からようやく開放された時に見せたなんとも言えない安堵の表情と微笑みは見ているものをして良かったなという気持ちを起こさせるものでした。



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