google.com, pub-2132796719425109, DIRECT, f08c47fec0942fa0 心に残る中国映画セレクション100

2017年11月24日金曜日

中国映画「無言歌」:当時国内にあった封建残渣との思想闘争が必要であったのは分かるが、これは闘争ではなく思想弾圧だ。

中国百科映画館 「無言歌」

近代中国が犯した誤りは?残っているのは『人間不信』だけ!

「右派」のレッテルを貼られた人々が、
砂漠の労働改造所の中で人間性を
そぎ落とされつつも上げる悲痛な生の叫び
 とにかく凄まじい映画であった。中国の砂漠の中の収容所での人間性をそぎ落とした生活を強いられた人々。彼らがどのように生き、どのように死んでいったかをドキュメンタリー風のタッチで、追い求める。

 朝鮮戦争が終わって間もない中国で、「百花斉放・百家争鳴」(あわせて「双百」とも言う。)が唱えられた。呼びかけに応えた人々が辿った過酷な運命。予想外の反発に驚いた毛沢東は、発言者に「右派」のレッテルを貼り糾弾した(「反右派」闘争)。

 この物語は、この「右派」のレッテルを貼られた人々が、甘粛省の砂漠の「収容所」の中で、虫けらのように命を落としていった物語である。

 今回は中国国内では公開されない、近代中国の恥部を告発したドキュメンタリー映画をご紹介します。

 とにかく今まで見た映画の中で、とりわけ衝撃的で、言い表しようのない想いでこれを書いています。


映画の紹介
 この映画の舞台は、中国甘粛省の砂漠の中の夾辺溝というところの収容所である。

 砂漠の中に掘られた穴倉の中に詰め込まれ、薄い粥だけが支給され、過酷な労働の中で、心身ともにぼろぼろになっていく。空腹のために、砂漠に生える草を食べ、ねずみを捕まえ食糧にする、死んだ仲間の肉をそぎ落として食べることまで密かに行われる。

 そのような中でも、多くの人たちは、獣に成り下がることとなく、僅かに残った人間性を保っている。逆に、私は「人間ってすごいな」と思う。

 映画は、そのような人々を、残酷なまでに描き出していく。決して面白可笑しい映画ではないが、時には見てほしいと思う。


映画データ
日本語題:『無言歌』(むごんか、原題:夹边沟、英語題The Ditch)
監督:王兵 2010年の香港・フランス・ベルギー合作の映画。


ストーリー
この映画にはストーリーはない。ストーリーが描けるような生易しいものではない。


背景と見どころ
 1950年代後半、中国国内で社会の不満が噴出していたことに、指導者の危機感を高めた。

 毛沢東は、人民内部の矛盾を解消するため、一種の「ガス抜き」の方策として「百花斉放・百家争鳴」(双百)を打ち出し、広く大衆の意見を求めた。 当時は、2000年も続いた、専制君主の支配からようやく抜け出し、辛亥革命を経て、内戦を経て、まだそれ程も経っていないじきである。国内には封建残渣が色濃く残り、ようやく統一国家として歩みだそうというときである。外部には資本主義国が手ぐすねを引いて、封じ込めを狙っている重要な時にあった。国家として一致団結をして進まねばならないときにあって、指導者としてセル気持ちは十分にわかる。 そこまではまだいい。結果的に人々をだましたことである。これによって、共産党に権威を地に落とし、言いようのない不信感を植え付けてしまった。やむを得ないといえばそういう側面もあるが、もう少し何とかならなかったか。ある種のもどかしさを感じる。中国の懐の深さはどこに行った?

 この映画は、この「双百」に呼応して声を上げた知識人達の受難の物語である。




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2017年9月8日金曜日

中国映画「宋慶齢の生涯」:中国の命運を決定付けた荘家の三姉妹!

中国映画「宋慶齢の生涯」:中国の命運を決定付けた荘家の三姉妹!

映画の紹介
宋慶齢の生涯:心に残る中国映画セレクション100
宋慶齢


 今世紀初頭の中国で、長きにわたって中国を支配してきた清朝は断末魔のうめきを立てながら、苦しんでいた。時代の奔流は、仲の良い三姉妹を、国をも引きちぎってゆく・・・・・。辛亥革命、西安事件、日中戦争、国共内戦・・・彼女たちは愛し、傷つき、苛酷なまでの運命に翻弄されながらも、激動期を生き抜く。この時代は生きていることだけでも、すごい時代であった。


映画データ
  • ジャンル:ドラマ, アジアの映画 
  •  監督:メイベル・チャン 
  •  主演:マギー・チャン, ミシェール・ヨー, ヴィヴィアン・ウー, ウィンストン・チャオ 
  •  助演俳優:ウー・シングォ, チャン・ウェン, エイレン・チン, ニウ・チェンホワ
ストーリー
20世紀前半、中国の清王朝から中華民国へと移り行く時代の流れの中で、古い因習にとらわれずに育てられた宋家の三姉妹。アメリカ留学から帰国した彼女たちは、それぞれに全く異なる道を歩むこととなる。長女(ミシェル・ヨー)は財閥の御曹司、次女(マギー・チャン)は後の国家主席・孫文、そして三女(ヴィヴィアン・ウー)は国民党の指導者・蒋介石のもとへそれぞれ嫁いでいく。そして孫文の死後、夫の革命の遺志を継ぐ次女は長女・三女と対立するようになり、姉妹のきずなに溝が生じていく……。それでも孫文の存命中は、未だ絆は壊されずに残っていた。
 しかし、孫文が死ぬや否や、待っていたかのように蒋介石が反旗を翻す。このことからも、孫文がこの時代の最大のキーマンであった。孫文の死後孫文の遺志を守ろうとする宋慶齢は蒋介石とともに歩もうとする長女、三女と対立は深まっていく。そして、日本帝国主義を中国から放逐した後、国共内戦の中で、宋慶齢と姉妹達の対立は決定的なものになる。



背景と見どころ
映画としてより、歴史参考書的な読み物としてみれば面白い。この映画のなかの三姉妹の間の対立は、中国の当時の路線の対立をそのまま反映したものであり、三人の国家・大衆に対する態度でその路線の違いが浮き彫りになっている。



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